act.16 先生がお忍びデート





「あ、いたいた。慎ちゃ〜ん!!」





『・・・んあ?』











放課後、SHRの終わった教室から職員室へと向かう途中の廊下で


わが友人。秀作独特のどこか間延びした声が私の背中越しに聞こえた。










振り返ってみればパタパタと音をたてて駆け寄ってきた秀作が

私の目の前で足を止める。






『なんかよーかいな。』





「あのねー今週の日曜日にこの前いってたケーキ屋さんに行こーって
誘おうと思ったんだ〜。」





ニコニコと頬を緩める秀作に、『あー、・・・』と口ごもる返事を返すしかなかった。






『、ごめん・・・今週の日曜は、なんつーか、予定が入っててさ。』





「そっか〜残念・・・。」





案の定、酷く残念そうに眉毛を八の字にさせて落ち込む秀作。



今なら彼の頭に、パタリと元気なさ気にたれた犬の耳でも見えそうだ。




『ごめん。来週ならあいてるんだけど・・・』




申し訳ない気持ちでいっぱいになってそうこぼせば

途端に元気になった秀作は


大きく頷いて返事すると、それからまたニコニコと手を振りながら

廊下の先へと消えていった。














『・・・・・はぁ・・・・。』





私も手を緩く振り返して秀作が見えなくなったところで

手を下ろすついでに深くため息をついた。







いつもだったら、人のお誘いを断るのにここまで申し訳なさを感じない。


なぜなら。


まぁ、先約があったことだし。


仕方がないことだからと自分でも割り切れるからだ。






しかしまぁ、今回の場合。



今週の日曜にある私にとっての所謂【用事】というやつは


なんというか、とても憂鬱な気分にさせる



要するにすこぶる行きたくない用事なのである。





そのくせ行かないという選択肢はないため、


あまりにも不本意な選択なのだ。





私だってできるなら休みの日くらいケーキ屋にでも行って
まったりしたかったさ。



















ところが、今回ばっかりはまぁ




そういうわけにも行かないと来たもんだ・・・
























「あ。慎ちゃんだ〜。」













『げ、』





再び歩き始めてバッタリと鉢合わせしたのは












『山村・・・・』








タイミング最悪である。











秀作と似たように間延びした声に、ゆっくりとした足取りで


これまたゆるーく手をふる山村。








「僕、明後日がすっごく楽しみなんだよ〜慎ちゃん。」







『あ、そ。』





「ちゃんと駅前の時計台に9時集合だからね〜。遅れたらだめだよー。」








それだけ伝えると、山村はそのまま私を通り抜かして行った。







ひょろい後ろ姿を一瞬睨んでから、さっさと職員室に向かうべく

歩調を速めた。




もう一度いうけどね、




私はものすごく日曜日が憂鬱でたまらないんだってば

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