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『・・・ありがとうございました。』





「おーじゃ、またな慎ちゃん。」







今日もこれから仕事だというハチさんに


自転車の後ろに乗っけて寮まで送ってもらい






いやいやながらもお礼を言う。





つーかテメー警官の癖にニケツしていいのかよ。






あきらかに不満タラタラなそのお礼にも


何がそんなに面白いのか、にこやかに笑みを浮かべながらハチさんは

自転車でさっそうと仕事場へ向かっていった。









お分かりだろうが、あのやろう当然のごとく昨日何があったのかは


最後まで口を割らなかった。




何度あの面を殴ってやろうと思ったことか・・・


いや、絶対負けるからしないけどそんなこと。








門の前で顔を覆いながら深いため息をついて、




そのままカバンからアイフォンを取り出す。








もちろん連絡する相手は小松田秀作である。










数回のコールの内、プツリと機会音独特の音を立て

その声が鼓膜を震わせた。






「慎ちゃん?今帰ってきたのー?」




『んー。すいませんけども、くれぐれも、くれぐれも内密に
門の鍵を開けてもらえませんかねー・・・』




自分でも随分歯切れ悪くもごもごとしゃべった気がする。





「んー・・・わかった〜今からそっち行くね。」




そういうと小松田さんは電話を切る。




考えてみれば現時点で時刻は6時。



小松田さんが起きてて良かった・・・・。








とりあえずなんとかなりそうだと、ホッと息をつく。







すると、ガラガラガラっと、スライド式の扉からトコトコと


少々早歩き気味に門まで駆け寄ってきてくれた小松田さんの姿が。






「慎ちゃん。朝帰りなんてしてどうしたの〜?」





少し眉をハの字にさせながらカチャリと門の錠前の鍵を開ける小松田さん。





『いや、なんか・・・こんなはずじゃなかったんですけどね・・・
気づいたら・・・朝だった・・・みたいな・・・?』





自分で自分が嫌になる瞬間だった。




なんだこのだらしない大人っぷりは・・・











開いた門をくぐり、小松田さんとともに寮の中まで歩く。






「昨日は合コンだったんでしょ〜ま、まさか・・・お、お持ち帰りてきな!!?」





とたんに頬を赤らめて私の顔をガン見する小松田さん。





『違いますよ!!あ、いや・・・たぶん・・・。』




どうにも歯切れのわるいその物言いに小松田さんは若干首を傾げるも




「もう。今度からは気をつけてよねー。吉野先生には黙っとくから。」




と、なんとも慈悲深いお言葉をくださいました。





『こ、小松田さんっ!!や、やっぱ私たち親友ですよね!!』




思わず感極まって少しだけ私より背の高いその体をギュッと抱きしめる。






いきなりの行動に小松田さんも一瞬は驚いたのか肩を大きく揺らしたけど




すぐに私の背中に腕を回してギュッと抱きしめ返した。







「あたりまえだよ慎ちゃん!!」







なんだこの熱い青春漫画のような展開は・・・




とか思ったけども。


始めたのは私からだし、



それからなんとなく、小松田さんだしいいか・・・


とかいう、非常に良く分からない考えに落ち着いた。







「だからねーそろそろ僕のこと名前で呼んでほしいかなーって?」






抱きしめる力をそっとゆるめて、私の顔をみて頬をゆるめる小松田さん。




いや、親友秀作。





『あーでも年上だし、秀作・・・さん?』




「んーいいよー秀作で。敬語だって僕気にしないし。」






そう言われ、私も秀作から体を離すと今度はグッと肩を組んでみせた。







『よし!こんど秀作が困ったときは、私が助けてやるよ。』





「うん!」




二人で顔をつきあわせてニカリと笑い合うと、




廊下の向こうから




「朝からうるさいですよ!!」




という、吉野先生の怒鳴り声が。




それでは私は静かに自分の部屋にもどります。



秀作に見守られながら早足に自分の部屋へと駆け出した。

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