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「今日はテスト返却日というわけですけど柏木先生。
おたくのクラスの英語の結果はどうでした?
まぁ、私の特進クラスの数学はそりゃあもう優秀な結果で、
それはもう難しい問題ではありましたが、平均点は・・・・って
柏木先生?聞いてますか?」







『・・・あー・・・はい。』



「ど、どうかしましたか・・・何か顔色が・・・」



『いえいえ、お気になさらず。』




その日、私はあの安藤先生に心配されるほどに
テンション駄々下がり状態だった。





「ど、土井先生・・・どういうことですか、アレ。柏木先生。」



「いや、なんかどうもテストの結果がすごかったみたいで・・・」




「テストの結果?そんなもの、3組ならばいつものことではないですか」


「それが、逆なんですよ。」


「逆?」


「それがね、加藤、佐武、皆本。」


「あぁ、あの毎回定期のテストで平均点を著しく下げるあの3人ですか?」



「っ・・・、まぁ、そうです。その3人が、
なんと今回の英語のテストで3人とも8じゅ」



『すみません。そろそろ授業行ってきます。』







その日、安藤先生と土井先生がひそひそとお話するくらいに


私の様子は異様だったのである。





職員室を出て、教室へ向かう足取りが異様に重かった。



何、びびってんだ私。



考えても見ろ、私は教師。



そう、教師なのだ。




あの約束が何だ。


あんなもん成立するわけがなかろうて、




そうだ、何も心配することはないじゃないか。







ガラガラガラ―





ガヤガヤ



ザワザワ






教室に入れば、まだ始業のチャイムはなっていないとはいえ


相変わらずの五月蝿さ。



しかし、今はなんとなくそれに救われている気がする。




つーか、気にしすぎだろ私。



んなやくそく最初っからなかったことにすればいいだけじゃんよ。





あーあれだな。


最近仕事忙しかったからなんかネガティブ思考になってたんだなきっと。



うん。


なんかどうでも良くなってきた。




よし。





「あ〜慎ちゃーんなんか久しぶりだねぇ〜」




教卓の後ろにある小さな丸椅子に腰掛けてみれば、


黒木の席であるはず椅子に座る山村が私に声をかける。




『んーテストだったからな。お前ちゃんと勉強した?』




「んー僕ねぇ、英語は担当が慎ちゃんだからがんばったんだ〜」




『ふーん・・・』



教卓に頬杖をついて、ニコニコとゆるい笑みを浮かべる山村を
なんとなしに見つめる。




なんか、




『嬉しいこと言うじゃん。』




かわいいやつめ。とか内心思いながら


山村の頭をグシャグシャとわざと乱暴になでてやる。



「はにゃ〜慎ちゃん俺がいつも
頭ちゃんとセットしてんの知っててそーゆーことする〜」



プクリと頬を膨らませて不満げな表情をする山村。






あざとい。



なんかもうそのわざとらしさに興味もうすれて、


今度は騒がしい教室内をグルリと見回すように遠くに視線を投げた。




するとまぁ、珍しくきちんと机に向かうように座っている3人が目に入る。



言わずもがな。脳筋トリオである。




私と視線が合った3人は、
一瞬ではあるが、ピクリと肩を揺らして反応した。




その反応に、なんだか私は面白くなって、

にっこりと笑みを浮かべてやる。






するとまぁ、3人組はショックを受けたような表情に・・・




「おい!慎ちゃん笑ってんぞ!!どういうこと!?」



「ま、まさか俺等3人とも無理だったって言うのか!?」



「おい、金吾!!お前自信あんじゃなかったのかよ!!」




わちゃわちゃと大声を上げる3人。




ふはははは、君たちは確かに、80以上いったさ。


しかし、あの約束を私が守る義理は無い!!






どこかで、



「大人ってずるい。」



という、かつての幼い自分の声が聞こえた気がした。






そうです。



大人とはずるい生き物なのです。




大人と書いてズルイと読むのです。

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