3





かすかに声が聞こえる。







「 −い、  ちゃ   」




誰かが私に話しかけてるみたいだ。




「おーい慎ちゃーん」




この声は、



・・・・そうだ・・・。





『こま、つださん。』







「あ、起きたーなんかすっごいうなされてたけど大丈夫〜?」





目が覚めて、目の前に広がったのは
小松田さんのあのポヤンとした顔。





あれ。




『なんで私寝てたんだ・・・?』



ガサリと起き上がって後ろ頭をかいてみるも思い出せそうになかった。


周りを見てみれば、どうやらここは学園の保健室みたいだ。





「慎ちゃんねーテストの丸付けの最中に
椅子から倒れたんだよー覚えてないの〜?」




『・・・・あー・・・・』




そうか、



そうなのか・・・






『ていうか、なんで小松田さん?』


新野先生は?




「僕?僕はねぇ、新野先生ちょっと用事があるから
慎ちゃんの様子見とくようにたのまれたの。」



『・・・ふーん。』




ということは。


私が倒れたということは、





あれは、




あのテストの解答用紙は事実であり・・・



夢なんかじゃなくて・・・



リアルで・・・・




『あああああああああ!!!』




「うぇっ!?な、なに?!ど、どうしたの!!?」






思わず叫んでしまい


いきなりのことに驚いた小松田さんは
キョロキョロとせわしなく視線をさまよわせ始めた。





『あー、す、すんません・・・なんか・・・ちょっと、
割り切れないというかなんというか、どうにも腑に落ちないというか。』





とりあえず、明日から私はどうするべきですか神様仏様。






いや、明日。
明日はまだ大丈夫だ。


そうだ、テスト期間。


その間は私の身の安全は保障される。






問題は・・・



問題は、テスト期間が終了し、


なおかつ、最初の英語の時間。


つまりはテスト返却日である。




『・・・小松田さん・・・なんか私、闇金の書類に印鑑押した気分・・・』



「えぇッ!!?慎ちゃん借金してたのぉ!!?」




『いや、そうじゃなくて・・・』




「そんなにまだ若いのに何があったの!?」




『いや、だからたとえ話で・・・』



「あ、もしかしてご両親が残した借金、みたいな!?」




おちついてくれ小松田さん。

私は借金もしてないし、第一、







『両親はどっちも健在ですよ。ピンピンしてます・・・』







「あ、そう・・・?」







むしろ、両親が借金を残してたっていう状況のほうが
まだましじゃないのか?







・・・いや、言い過ぎたな。


全然そんなこと無い。





『むしろ、乳もまれてソレですむなら断然そっちの方がいいじゃんよ。』




「えぇ!?なに?!どういうこと!?よ、よくわかんないけど!!
お金が無いからって体は売っちゃ駄目だよぉ!!!!」




若干うつろな目をした私に、
小松田さんはなにやらとんでもない勘違い続行中のようで


ものすごい勢いで私の肩を強く揺さぶる。





いや、ちょ




気持ち悪いからヤメテ・・・








・・・・・?




いや、






『そりゃそうだ・・・小松田さんの言うとおりだわ・・・。』





「へ?わ、分かってくれたの慎ちゃん!!」





落ち着くのは私のほうだった。



"乳をもまれてすむならそれでいい"って何だ馬鹿!



そもそも私は借金してないってば!!



"それでいい"ってなんだ"それでいい"って




なんで妥協してんだ。

比べるもんがそもそも無いだろ。



借金してないわけだからね。





『危なかった・・・なんか色々とプライド的なものを
なくすとこだった・・・サンキューです小松田さん。』




「う、うん!!なんかわかんないけど!
僕、慎ちゃんの力になれたみたいで良かったよ!!」






『とりあえず頑張ってみます。』




何を頑張ればいいのか自分でもわからんけど・・・



だめだ、何か今ものすごく支離滅裂だ自分。





「それじゃあ、僕も仕事があるからもう行くけど!
また何か悩み事があればいつでも僕に相談してね!!
僕は慎ちゃんの唯一の友人、いや親友なわけだから!!」




そんなことを言って保健室から出て行く小松田さん。



おい、まて、


いつから私たちは親友になったんだ。




ていうか、小松田さんの中で私には友人が居ない設定なのか?


"唯一の"ってどーゆーことだ。





私にも友達くらいいるわ。




ほんっと、マジで失礼な。


あの人。

[ prev / next ]
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -