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『逃げんなコノヤロウ!!』



「うわぁ〜ん先生見逃してー!!」



福富のシャツをつかみ、捕まえたところでヘッドロックをかければ
苦しい、といわんばかりに私の腕を叩く福富。



『それはできん相談だ!一応私が伝言たのまれたからさぁ、
            担任としてもしっかり行かせんと。』



つーか、今も理科の先生が教室で待ってるっつーのは
申し訳ないだろうに。



『はい、とりあえず連れて行くからな!』


そういって福富の首を開放し、背中を無理やり押して歩かせる。



『ほらほら、チャッチャと歩け。
        お前図体でかいんだから、重いんだよ。』


そう言えば、ぶつくさと不満たらたらながらも福富は足を動かした。


『早く行って、早く終わらせりゃあすぐに帰れるだろ?』


あきれた様にそうつぶやき、福富の背中を押し続ける。




くそ・・・思ってた以上に重労働だ・・・






しばらくそのまま福富と歩いていると、ようやく
科学実験室が見えてきた。



『ほれ、先生待ってんぞ。』



「うぅ・・・」



未だにブゥたれる福富だが、もはやあきらめたようで
私があまり背中をおさずとも足を動かした。



ようやく教室の前につき、福富に扉を開けさせる。



ガラリ





扉の開いた教室に福富を押し込むように強めに背中を押した。



すると、その光景に黒板前の実験台に肘をついて、
理科室特有の丸い椅子に腰掛けた黒髪の男性が
少し驚いたように目を丸めてこちらを見ていた。



「あ、しんべヱやっと来た・・・」



黒い艶のある髪がサラリと揺れ、長い睫毛に目がいった。



なに、この人睫毛長・・・




「久々知先生・・・補習なんてひどいですよ・・・」



福富はそういいながら、実験台のそばへと足を動かした。


どうやらこの男性が理科教師らしい。



はじめて会う先生だ。



"眉目秀麗"とは、まさしくこんな人のことをいうのだな、
と、若干呆けた頭で考えた。



「あの、もしかしてしんべヱの担任の・・・」



『あ、・・・柏木慎です。』


切れ長の瞳になんだか気まずさを感じて、若干視線をそらして答えた。



「・・・つれてきてくれたんですね。ありがとうございます。」


ニコリ


と綺麗に向けられた笑みにますます私は居心地の悪さを感じて
ついには顔をそらしてあいまいな返事をこぼした


なんでか知らんが苦手だと思った。


初対面で苦手意識をもつなんてそうないだろうに



そんな私の態度に福富は少し首をかしげる。


「どうかしたの柏木先生?なんかへんだけど。」




『ん、あぁ・・・な、なんもないけど?じゃ、がんばれよ。』




少し口早にそう言って『失礼します』と軽く頭を下げて
すぐに教室を後にした。



なんとも不思議そうな顔をした福富と久々知先生がこちらを見ていたが
気にしないフリをした。




 
理由はわからないが、なんだか胃が気持ち悪くなった。


何だ

どうした私の体。

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