act.1 先生と始めまして


突然ですが。質問です。




Q1.  私、柏木 慎の職業はなんでしょう?











「あの・・・柏木さん・・・私、何か悪いことしたかな?」





『・・・・は?』







学生時代、そこまで仲が良いわけではないが
普通に話したりする友人に言われた一言。



意味が分からなくてずいぶんそっけない態度をとってしまったが

それはまぁ、仕方がないことだと思う。


目の前の友人は少しおびえた表情を見せながらも、もう一度私に問いかける。

なにか自分は気に触るようなことをしてしまったか・・・と。





やっぱり意味は分からなかった。
どうしてそんな話になったのだろうか。


逆に私が何かしてしまったのではないか?
答えが出ず、首をひねっていると


彼女はさらに泣き出しそうに震えた声でポツリと声をもらす。




「だって、柏木さんいつも私といる時、すっごく機嫌悪そうだから・・・・」




ソレを聞いて驚いた。





だって、そんなつもりはただの一度だってなかったからだ。




「ほら、今だってすっごく眉間にシワよってるし・・・私何か嫌われるようなことしちゃったかな・・・?」




その友人の言葉に、やっと頭が追いついた。



そして一つ言っておきたいのは






私の目つきはかなり悪いってこと。





別に、彼女のことが嫌いだとか、気にくわないだとか、
そんなことはまったくもってない。



ただ単に目つきが悪いだけ。



というか、眉間のしわが取れないのだ。
コレは半ば癖のようなものである。

彼女は大きな勘違いをしている。
別に私は彼女の前ですごく不機嫌そうな顔をしているわけではないのだ。
私はそんな気なんてまったくもってないのだが顔的に不機嫌そうなのは常である。



そんなことを彼女に伝えると
彼女は分かってくれたのか、ほっとしたように

そして、勘違いをしていてもうしわけないと思ったのか少し照れくさそうに謝ってきた。

中学は、小学校からの付き合いのやつが大半なので
私の目つきの悪さを理解している。

だから、こんなふうにたまに誤解が生じたり、怖がられたりしても
まぁ、言って小さいものばかりだ。



しかし、高校にでも入ると。まぁ、ほぼ私のことを知らない他人だらけになる。
見てくれといえばピアスの沢山あいた耳に。脱色した髪。
極めつけはすこぶる不機嫌そうな眉間のしわである。



入学早々、そういう不良にからまれるし、

私も気が弱いわけではないし、逆に自分と見てくれのそう変わらない不良といるのはまぁ気が楽だった。



そして流れた噂といえば・・・





この地域のレディースの総番だとか



学校長は私に頭が上がらないだとか、



極道ものと流血沙汰の事件をおこしただとか




とにかく身に覚えのない私の武勇伝の数々だった。





念のために言っておくが






わたしはヤクザが相手でなくても流血沙汰の事件をおこしたこともなければ
建物を放火したこともないし、
ましてや盗んだバイクで走り出しちゃったことすらない。

見てくれはどうであれ、中身をのぞくと
神経は図太いものの、本当につまらない唯の一般ピーポーである。




ようはここまで長々と何が言いたいかというと・・・





見てくれがゆえに私は誤解されやすいということである。








誤解されにされ続けた高校時代。
そのおかげで私の心はヤサグレ噂通りの不良の道を淡々と進んで行き。
いまや極道ものになりさがって・・・・























いるわけもなく。













なかなか良い成績で高校を卒業し、そこそこの大学にも通った。
そしてまぁ、卒業した年に運よくも採用試験に合格したのである。









ここでもういちど、








Q1.  私、柏木 慎の職業はなんでしょう?













「柏木さん。もういちど言いますけど3−3組ですからね。あなたの担当は。」


『はぁ。』


「まぁ、初めてだしここは男子校だから緊張すると思うけど・・・がんばってください。」



『はぁ。』



「ほらほら、もっとシャキッとして!柏木先生。」





A.  高校教師。




人生何があるかは全く分からないもんだ。

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