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『はーい、席つけよ。終礼始めるかんな〜』



SHL。


今日も一日を何の問題も無く終わることが出来た。

あ、いや



問題なら一つだけあるか・・・


『いつもなら言うことないんだけどさ。一個だけお願いね。
     ウチのクラスは数学の態度あんま良くないって
        注意受けたぞーそのへんしっかりするように。』


安藤先生にグダグダ言われんのは担任の私なのだ。

どうもあの人は苦手で、話していると
相当神経を擦り減らしてしまう。


「あーい」


今日のことを思い出し、
少し苦い表情で注意をすれば一応返事は聞こえるものの
本当に改心したかどうかは怪しいものだ。

現に、この前屋上でサボっていた夢前も
たしか数学の授業の時だった。


『それから、今日は放課後教室で英語の勉強会するから
          参加する気ないやつはさっさと帰れよー』



「はにゃ〜?いきなりだねぇ〜」



『まぁ、生徒に頼まれたからついでにね・・・』


「ふ〜ん。」


首をかしげた山村の
少し意味ありげな顔が何故か鼻についた。


『何。山村も勉強すんの?』


「んーん。しな〜い。」


『あ、そ。』


なんだか妙に突っかかるような口回しに
少し投げやりに返事を返してやった。


『つーことで、今日はこれで終わり。はい、解散〜』



そう言えば案の定

ワラワラと教室を出て行く生徒達。



まぁ、当然の結果

教室にのこったのは黒木と二郭。











『んーじゃあまぁ。先に黒木のわかんないところから教えようか。』


「はい。お願いします。」



こういう場面で何だか
私は本当に教師になったんだな〜なんてあらためて思ってしまう。













● ○ ●




黒木は分からないというところを簡単に説明してやると
なんともあっさりと理解したようで

私の説明に小さくうなづくとすぐさま後の問題を解き始めた。


『・・・・。』


さすがというべきか・・・

あまり教えれたような気はしないが
黒木が分かったというならそれでいいか・・・




そして次に二郭の席の隣に椅子を持ってきて腰をおろす。

問題集に目を向けていた二郭は
私が隣に来たことにチラリと一瞬横目で確認するように視線を向けた。



『どう?分かる?』



机に片肘をついてそう問えば
二郭は再びチラリとこちらに視線を向けた。


「まぁ、今のところは問題ないです。」


この前習ったばかりのところなんで・・・


そう付け足した二郭に、
別に呆れたとか疲れたとか言うわけじゃないけど

内心でため息をついた。


黒木と二郭。


二人はあまりにも手がかからなさ過ぎて

今ここに私がいる意味が
果たしてあるのだろうかと思ってしまったからだ。


手持ち無沙汰になってしまった私は
何気なくグランドの見える窓を眺めた。


少し目をこらせば下のほうで何か揺らめく影が。

どうやら白衣を着た人のようだった。


白いひらひらとしたものがせわしなく花壇の周りをうろついている。


あれは・・・


『理科の先生かな・・・』


「へ?何かいいましたか?」


思わず見慣れない黒髪のその人に
小さく独り言をこぼしてしまうと二郭が不思議そうに首をかしげた。


『いや、ごめん。何もないよ。』


少し苦笑い気味にそう返すと

二郭は何も無かったように再び問題集に視線を落とした。


まだこの学校に入って間もない私は
初日に職員室で挨拶はしたものの。

余りあったことのない教師がまぁまぁいたりする。


例えば、さっき見た理科の先生。
それから、古典の先生とも余り顔を合わせたことが無い。


珍しく静かなこの教室で。
暇をもてあました私はとりとめも無くそんなことを考えていた。



「柏木先生。」


そこで、フと聞こえたのは前に座る黒木の声。


「質問してもいいですか?」


『ん?別にいいけど?』


というか、そのための勉強会なのだ。

そんなことを聞くのは少し律儀すぎやしないかと
内心苦笑い。


黒木はこちらに視線を向けることなく、手を休めることなく
言葉を続けた。





「三治郎とキスしたんですか?あ、兵太夫もか。」




『は?』

「ブフッ!!」








なんてことも無いように黒木がつぶやいた質問。



しかし、内容はとんでもないもので・・・



思わず聞き返してしまった私。

そして

隣で吹き出した二郭。



「しょ、庄左ヱ門何言ってんの!?」



「?伊助だって別に知ってるでしょ。」


「い、いや・・・確かにそうだけど・・・」



なんとも言えない表情で口ごもる二郭。

いやいや、ちょっとまて。


確かに黒木の言ったことに嘘なんてないけども

何でそれを黒木も二郭も知っているのか。


ていうか、質問って英語じゃねぇーのかよ。



『な、何で知ってんの・・・』



「あぁ、やっぱり否定しないあたり本当なんですね。」



聞いてきた割にはあまり興味無さ気に口を開く黒木。

なんでそんなに冷静なの・・・


「僕達のクラスじゃ、そう言う話ってすぐに回っちゃうんですよね。」


“みんなが知ってる秘密”ってやつですよ。



そんなことを淡々と言ってのける黒木の腕は
やはり動いたままだった。


二郭を見れば、気まずそうに眉毛を八の字にさせ
苦笑いで返される。


なんだか頭を抱えたくなった。

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