5

一言。




たった一言だった。






しかも、この状況の説明してくれというような疑問の声。

仮に英語で言うならば『What are you doing?』



ただそれだけ。







その一言だけで


私の部屋の空気が凍りついた。












「へ、兵太夫・・・」





猪名寺と二人そろって部屋の入り口へと視線をむける。





「ね、何してんのってば。」




そこには、


表情を無にした笹山が、部屋の入り口にもたれかかっていた。



『笹山・・・?何でここに・・・』




「そこの廊下歩いてたら、
なんかうるさい声が聞こえるから来てみれば・・・・
乱太郎って、意外に強引なんだね。ビックリしたよ。」




「あ、あの・・・兵太夫、なんか・・・勘違い・・・して」



猪名寺の眼鏡がくもる。

冷や汗をかいているようだ。



コイツも一応笹山が私のことを好いているのを理解しているらしい。


状況を理解した私は口角を上げた。


この状況を利用しない手はない。




『笹山!助けろ!!猪名寺が私が足を怪我して
            動けないことをいいことに!!』



「ちょ!な、何言ってるんですか柏木先生!!」










「・・・どうでもいいけどさ、乱太郎。早くそこからどいたら?」



「は、はい!!」



まだ無表情である笹山に縮みあがった猪名寺は
恐る恐るといった風に私の上からどく。



「・・・柏木先生。出歩いたら、
       伊作先生に言っちゃいますからね・・・。」



私に聞こえる程度に小さく囁き、少し唇を尖らせると

笹山から十分に距離をとって部屋から出て行った。



ふぅ、やっと監視役が出て行った。


それにしても、あのタイミングで笹山がでてくるとは・・・
やはり猪名寺の不運は伊達ではないようだ。



まだ少し、猪名寺がでていった廊下をにらみつけている
笹山を視界に、猪名寺を想って両手をあわせた。



ご愁傷様・・・







ま、とりあえず。


これで飲みに行けるってもんだ。




『さんきゅー笹山。助かったわ。』


体を起こして、ベットに腰掛けた状態にもどり
お礼の言葉をのべる。




「・・・あんたさぁ、ホントに分かってないよね。」




『は・・・。』


ヤバイ、何だか知らんがまだご立腹の様子。


眉間にシワを寄せたまま、笹山は私の目の前まで来ると

目線を合わせるように少しかがんで見せた。




「きり丸の部屋にいたと思ったら、
こんどは乱太郎を部屋に入れたわけ?信じらんないんだけど。」




『いや、入れたくて入れたわけじゃないし・・・』



「ふ〜ん・・・僕の気持ち知ってて、そうやってはぐらかすんだ。」



は、はぐらかすって・・・

ホントのことだし、



なんだか猪名寺の時より
余計にめんどくさくなった気がする・・・



『あー・・・ごめんごめん』



怒ってるみたいだから、とりあえず誤っとく。



「何がごめんなのか、分かって言ってんの?」


『うん』



分からんけど











「ふ〜ん・・・・」





笹山の眉間のシワがとれ、
変わりに目がスッと細められた。





「残念だけど、今日は許してやんない。」




『は・・・んっ』




講義の声を上げようにも、



言葉を




笹山に飲み込まれた。





『なんっ・・・んぅ、』



やばい、



深い。





キスが。




とっさに声を上げようと口を開いたせいで
笹山の舌が私の舌を絡めとる




『ふ・・・ぁ』




逃げられない


引こうにも、後頭部を押さえられ身動きが取れない


絡められた舌に、背筋がゾワリとした感覚を覚える。





『んぁ・・・っ』




こ、このやろう



なんだか手に力も入らず、
抵抗すら出来ない。




「んっ・・・」



やっとのことでキスが終われば、笹山をにらみあげる。



『てめぇ・・・な、にして・・・』




息が切れて、うまく口が回らない。



「しょうがないから、これで許しといてあげる。
     これに懲りたら、こんどからちゃんと気をつけなよ。」



若干放心している私を横目に、
そう言うと笹山は部屋から出て行った。



『・・・・。』






夢前の時も思ったが、


アイツら手が早い・・・

まじで勘弁してくれ。私は教師だ



猪名寺の不運が移ったのかもしれない。

どうして私がこんなに頭を悩ませなければいかんのか・・・
怪我はするわで散々すぎる一日だ。




もう一度ベットに横になる。




最悪だ



飲みに行く気分でもなくなった。



クシャリと前髪をかきあげる





『・・・何してくれてんだ馬鹿ヤロー・・・。』







年下に興味ないんだってば・・・

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