act.8 先生と不運

私の体を背負うその体は、先ほどと変わって

少し頼りないくらいの細さだった。



でも、やっぱり男の子なもんで。


広い背中だった。


見た目はひょろいけど、意外と力はあるんだな・・・


「柏木先生聞いてますか!?まったく、大体柏木先生は
      最近怪我をしすぎですよ!!女性なんですから!
         体に痣でも残ったらどうするんですか!!」



『まぁ、とりあえず原因である佐武に嫁にもらって貰うかな。』



「またそんなこといって!!
         もうちょっと真剣に考えてくださいよね!!」



それから、彼の口うるさい説教を適当に聞き流す。


佐武に代わり、今私を保健室まで運んでいるのは


我が生徒である3−3の生徒、猪名寺である。





私を背負ってなんとか学園まで帰ってきた佐武と加藤。

そんな中、校門の前を偶然にも通りかかったのが猪名寺だった。


私たち3人をみた猪名寺はものすごい剣幕でやってきて



佐武と加藤に事情を聞き、すでに疲れきっている佐武に代わり
私を背負って保健室まで歩いているのだ。



なんでも猪名寺がこんなにも怪我にうるさいのは
              彼が保険委員だからならしい。


いや、普段おとなしいやつが怒ると怖いっていうのは

           ホント、あながち間違っちゃいない・・・





『でもさ、私だからこんな足の怪我ですんだんだよ。
            子供ならもっと酷かったかもしれない。
        もしかしたら頭を強くうっていたかもしれない。』



思ったことをふと、口に出してみると


それでも、と猪名寺は渋った。


「それはそうかも知れないですけど・・・柏木先生はもう少し
              自分の身を案じてくださいよ。」



『しゃあないんだよ。子供を守んのが大人の役目なのー』




そこまで言うと猪名寺はまだ渋い顔をしてはいるものの
大きくため息をついたきり、何も言わなかった。





そうこうしている内に、保健室についたようで

猪名寺の足が扉の前で止まった。


コン コン


リズム良くたたかれた扉が小気味のいい音をたてる。



「はい。」


中から聞こえた返事に「失礼します。」と一言。


そして開けた扉の中へ足を入れた。



中に見えたのは少し明るめのライトブラウンだった。

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