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『とりあえず、今日はもうかえ「うわあ゛ぁぁぁん!!」』





『帰ろうか』そう口にしようとした私の声をさえぎったのは



子供の泣き叫ぶ声。








『何、いきなり・・・』



声のほうへ視線を向けると、


そこには高い木の上で泣き叫ぶ小さな男の子の姿。




「べたに、上ったはいいが降りられんってやつだなありゃあ」




佐武はそう言うと男の子の方へと足を向けた。



まぁ、なかなか近くにいるし、見てみぬふりはできないのだろう。


周りには大人の姿もなかった。




仕方なしに、私と加藤も佐武の後を追う。










「おーい、お前降りられなくなったのか?」





なかなかに高いところまで上ってしまったらしい。


泣き叫ぶ男の子を見上げて佐武は声をかける。




「うぅ、ひっく、うん・・・」




ボロボロと涙を流しながら頷く男の子。



何だってそんな高いところに上ったのか・・・





「あ、アレ・・・」




同じ思いだったのか


少し遠くから見上げる私の隣にいた加藤はある一転を見上げ、指差した。






『あぁ。』




そこには木の枝に引っかかった風船。



おそらくアレを取ろうとして木に登ったのだろう。




すると佐武は、おもむろにその木を掴むと、丈夫そうな枝に足をかけ、

                      軽快に上っていく。



『ほぉーなかなかうまいもんだね。』



どんどん上っていく佐武を見上げ関心の声を上げる。




「まぁ、虎若は運動神経いいからなぁ〜。」




「俺もだけど」加藤も上っていく佐武を見上げながら
                   そんなことをつぶやく






そして、佐武が男の子のそばまで登ってきたところ、




『・・・なんか、危なくね?』





そう、佐武の体重もくわわったからか、男の子のしがみつく木の枝は


じょじょにだがしなってきている。





「んん?確かにちょっと危ねぇーな・・・」




若干眉を寄せた加藤は佐武に声をかける。




「おーい、虎若!気をつけろよー!!」




その声に反応した佐武はのんきにもこっちに手を振ってきた。






『あっ!!馬鹿っ!』




その瞬間、手を振ったことにより、
         佐武の体重のかかり方が変わったのか


男の子のしがみつく木の枝がミシリと音を立て、傾いた





「ああ!!」



加藤も焦ったように声を上げる。




「やべっ!!」




佐武も急いで男の子の手を掴もうとするがあと少し距離がたりない。




「やばい、落ちてくる!!」







あの高さから落ちれば、小さな男の子のことだ、


大怪我をする危険性が大きい。



『ちっ、』



大きく舌打ちながら、急いで木のそばまで走り出した。






「ちょ、慎ちゃん!?」




おどろいたような加藤の声を遠くに聞きながら上を見上げる、




今まさに、木の枝が折れるところであった。




「わあああああああぁぁぁぁ!!!」




『くそっ、間に合え!!』







ドンッ







次の瞬間、体に大きな衝撃がはしる








『っ、たぁ〜!!』








「柏木!?」

「慎ちゃん!!」







どうやら、落ちてきた男の子を受け止めることに成功したようだ。



男の子の泣き声と、体中に痛みが走るのが分かった。





『っ、おーい大丈夫か・・・?』



地面に転がったまま、抱きかかえている男の子に声をかければ

ぐずぐずと泣きながらも小さな返事が返ってきた。






「透君!!」





すると、若い女の人が、騒ぎを聞きつけてこちらに走ってくる。




「マ゛、ママー!!」





男の子は鼻水をたらしながら、走ってくる女の人にしがみつく。


どうやら母親のようだ。




「透君!!どこいってたの!?探したのよ!?ダメじゃない!!」




どうやらたいした怪我のない男の子を見て


ゆっくりと上半身を起こす。



『って〜・・・・』




立ち上がろうにも、足に激痛がはしり、出来そうにもなかった。





「あの!!大丈夫ですか!!?ごめんなさい!!うちの子のために!」





私に気づいた母親は、血相を変えて私の元へやってくる。





『大丈夫ですよ。わたしはピンピンしてますから、
                 お子さんは大丈夫ですか?』



「だ、大丈夫です!!本当にありがとうございました!!」



涙をながしながら頭を下げる母親に、私は苦笑いを浮べる。




『そんなに、頭をさげないでください。お子さんも大丈夫そうですが
           一応病院に連れて行ってあげてください。』




「はい、ありがとうございます!あの、本当に大丈夫ですか?」



酷く心配そうに座り込む私を見つめる母親に、
                 私はニッコリと笑いかける



『全然大丈夫ですから、ほら、早く行ってください。』


そう言うと、母親はまだ申し訳なさそうに一礼してから

泣きじゃくる男の子を抱え、小走りにその場を去った。







「・・・何かっこつけてんだよ!!」




息を切らしながら走ってきた加藤に目をまるくする。





いや、んな怒鳴られると思わんかったから




「馬鹿、何がピンピンしてるだよ・・・立ててねぇじゃん。」



いつの間にかそばにいた佐武は、しゃがみこむと


私の足をおもむろにおさえる




『っだぁ゛ー!!!』




あまりの痛さに声を上げ、うずくまる。




「病院いくの明らか慎ちゃんのほうだろ!!」




「まぁ、いくら小さな子供とはいえ、高いところから落ちたのを
受け止めたんだからな、足に相当負担がかかったんだろ・・・」




あきれたような表情を浮べる佐武に、


私は涙目になりながら声を上げる。





『いや、元はと言えばお前が手なんか振るから・・・』





それに佐武はうっ、と言葉を詰まらせる。





『責任もって、学校まで私を運べ!』





「まじかよ・・・・。」




うなだれながらも仕方がない

と、佐武は私を背負う。




『いだだだっ!!ちょ、もっと優しく触って!!』




「ほ、ほんとに大丈夫かよ慎ちゃん!!
      つか、病院に行かなくていいのかよ!?」



『あぁ、学園の保険医に頼もうかと思って・・・』



なんか、すごく腕のいい人らしいし。


それでも病院行けっていわれたら行くけど・・・




「まぁ・・・新野先生なら確かに・・・・」



しかしまぁ、せっかくの休みの日だというのに

なんとも悲惨な一日だ。


つーか最近怪我しすぎだろ私


厄年かもしれん・・・・

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