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『ぐあぁーつかれた・・・』



「ちょ、虎若。俺、喉すこぶる痛いんだけど・・・・」




「そら、あんだけ叫んでたらそうなるだろ・・・・」







結局、遊園地中のアトラクションを乗り回した私と他二名。



絶叫からメルヘンチックなものまで

とにかく乗り回した結果がこれだ。




久しぶりに遊園地なんて来たもんだから


あほみたいにはしゃいでしまった・・・



疲れてベンチで休憩を取っている今。




今更ながらに少し恥ずかしくなって後悔しはじめる。



なんだ、あのテンション・・・

成人して2年(いやほぼ3年だけども)の人間の
                テンションじゃない・・・。




「つーか、テンション上がりすぎて団蔵と柏木が
         メリーゴーランドに行った時は
           俺マジでどーしようかと思った・・・。」




『うわー・・・ちょ、マジカンベン。

       今ちょうど後悔してたとこだし・・・・。』




佐武のどこか遠い瞳に、


羞恥で若干赤くなった顔を隠す。





「えぇ!?何で?俺めっちゃ楽しかったけど!?」






頼む、もうお前は何も言わないでくれ・・・・





『・・・結局、もう全部乗り回したの?』





話をそらすべく、佐武に視線を向けた。







「いや、一つだけまだ乗ってないのがある・・・。」



「何ソレ?もうどうせなんだからさぁ、全部乗っちまおうぜ。」



まぁ、確かに。


ここまで来てあと一つとゆうのなら

どうせなら全部乗ればいいだろう。



加藤の意見にうなずいてみせる私に


佐武は少し気まずそうに頭をかいた。




何だ?




『んで、その最後のいっこは何?』








「あー・・・・」





なおも口ごもる佐武。



その様子に加藤と私は首をひねる。












「何だよ?」












「・・・観覧車。」










ボソリとつぶやいた佐武に



私はなんとも言えない気持ちになる。







『・・・・よし、帰るか・・・。』







そりゃ、口ごもるわな・・・




「えー何でだよ!せっかくだし乗ろうぜ!慎ちゃん!!」




するとまぁ、納得がいかん

と、声をあげる加藤。




いやいや、考えても見なさいよ。


観覧車なんてもう、ほぼ恋人のためにある

といっても過言ではない乗り物に、この3人で乗るんですか。




奇妙にもほどがあるだろ・・・





『つーか、3人とかバランス悪いし。
観覧車はまた君が彼女と来た時にでも乗りなさいな。』




ベンチでぐーと伸びをしながらそう口をひらくと

加藤は理解したようで大きくため息をついた。



「まぁ、確かにそうだよな・・・
         俺ら3人で乗るのはちょっとなぁ・・・」





そしてベンチから遠くに見える観覧車を見上げる。


ゆっくりと回っていくソレを見てポツリ





「俺彼女いねぇーし・・・・」



寂しげな加藤の呟きが聞こえた。





『この前合コンとか言ってたじゃん、アレだめだったの?』




何気なくそうこぼすと、加藤はより一層うなだれる




「それなんだけどさぁ・・・聞いてくれる慎ちゃん?」




何だか話が長くなりそうなので正直遠慮したいのだが



それは少しかわいそうかな・・・なんて思い



喉下から出かけた否定の言葉を飲み込んだ。




「俺の狙ってた子と、結構仲良くなってさぁ、メアドも交換して
      お?コレはいけんじゃね?とか思ってたわけ・・・」



『はあ』




「そしたらその子、やたら俺に兵太夫のこと聞いてくんの。
アレ?なんかおかしくね?って思ってたら、
      その子、最初っから兵太夫狙いだったわけ・・・・」



『う、うん』




うわぁ〜・・・悲惨だ。


そればっかりは同情せざるを得ない・・・



「ま、つまるところ団蔵はその女に利用されてたってわけな。」





カフェオレなんて心底似合わんオシャレなもんを


音を立てながら飲み干した佐武は、同情するわけでもなく言った。



加藤はそれにゆっくりとした動作で頷く。




『ま、元気だせって・・・告白する前にそんな女だって
             分かったんだからいいじゃん。』



きっとそう言うやつはロクでもねぇーからさ。




そう言うと、加藤は少し顔をほころばせる。


ソレを見て、佐武は少し驚いたような表情を見せる。




「柏木って慰めんのうまいな。そんな考え方もあんのなぁ〜」




思いもよらなかった自分への褒め言葉に、私も若干おどろく。





な、なんか嬉しいぞ・・・?





「つーか、なんで慎ちゃん俺が合コン行ったん知ってんの?」




『あーそれはなぁ・・・ちょっとちょうだい。』






首をかしげる加藤が手に持っていたコーラをひょいっと奪ってから

話を続けるべく口を開く。




『授業中に夢前と笹山が言ってたんだよ、合コンどーする?
みたいなことを。んで、加藤さそっときゃイイだろ
                的なこと言ってたから。』



授業中にだからな、いっとくけど・・・



最悪だろアイツら・・・



そんなことを思いつつコーラを口に含む。



加藤じゃないけど、私もなかなかに叫びまくったため

喉がかわいて仕方がなかったのだ。




『ぷはぁー・・・ん』




喉がすっきりしたところでソレを加藤に返す。



「つか、慎ちゃん自分で買えばいいじゃん。俺のコーラ・・・」



コーラ一つでけち臭いこと言うなや



加藤の嘆きを無視してベンチの背もたれに寄りかかる。




そこでふと、佐武が私に視線を向けているのに気づく。





『何・・・・』




少し眉をよせて言うと、佐武はポツリとつぶやいた。





「いや、間接キスだなーと思って。」








『はぁー?』



その言葉にあからさまに声を上げる。




『んな、ジュースの回し飲みくらいで・・・餓鬼かよ、なぁ?』



加藤に同意を求めるように視線を向けると、




「なっ、あ・・・・!?」




口を鯉のようにパクパクとさせた加藤がいた。




なんだその動揺っぷりは・・・



お前さっきまで普通だっただろ


自分で飲み物くらい買え的なこと言ってただろ







『なんで顔赤くしてんの・・・』

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