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保健室にいた新野先生から薬と水をもらい、

食堂のおばちゃんにおかゆを作ってもらい、

それから売店でポ●リと適当にプリンを買った。





そして、また摂津の部屋へと向かう。


今更ながら思うけど・・・


私が男子生徒の寮の部屋を出入りするのは
結構ダメなことではないだりうか。



まぁ、緊急事態だし、いいか。

ていうかばれなかったらいっか・・・




そんなことを考えてるうちに摂津の部屋の前まで来て

部屋のドアをあける。




『おーい色々持ってきてやったぞ・・・』



ベッドまでいくと、

摂津の体制が部屋を出て行く前と変わらない気がする。



なんでだ・・・




今日で何度目だといわんばかりに、また小さくため息をついて


荷物をおろした。


『はい、食堂のおばちゃんに頼んで
            おかゆ作ってもらったから、食べな。』



おいしそうなおかゆを摂津の前まで持っていくと
ピクリと肩を揺らした。



「食欲ない・・・。」



『何?あ〜んしてほしいって?』




「・・・・自分で食う・・・。」



そう言って少しづつでも食べていく摂津の姿に笑みを浮かべる。



「何・・・。」



『いや、かわいいやつだなと思って・・・』



すると摂津はあからさまに嫌そうな表情を浮かべる。


バカだなぁ、そういうのがかわいいんだって。

ニヤニヤしながらみていると摂津は私に背中をむけて食べだした。



くそ、なんだお前は・・・










「ん・・・もう、いい・・・。」



『おし、半分でも食ったら上出来。』


えらいぞーという意味をこめて頭をワシャワシャとなでてやる。

するとまぁ、案の定うっとうしそうな顔を向ける。





あ、それはあんまかわいくない。ムカつく・・・・



『はいはい、ごめんって。薬飲んで寝たら帰るから・・・。』



苦笑い気味にそういいながら薬と水を差し出す。

摂津は素直にうけとるとゆっくりと薬を飲む。




『はい、んじゃここにポ●リとプリン置いとくから。
                  食べたいとき食べろな。』



ベッドにもぐりこんだ摂津の横まで来てひざを立てながらそういうと




「なぁ、ずっと思ってたけど・・・アンタなんで顔に怪我してんの。」



と、私の顔のガーゼをじっと見つめる。


『あー・・・別になんでもないよ、ちょっとね。』



そう言って言葉を濁すものの、
摂津は納得いかないというような表情を浮かべる。


「いいじゃん、話してよ。そしたら俺寝るから。」




『餓鬼か・・・・』



あきれながらそうこぼすも「いいから」とせかされる。




しゃあないなぁ・・・



『昨日さ、不良に絡まれてた皆本と一緒に、

不良を追っ払ったときにつけた傷。名誉の負傷ってやつ?』



半ば投げやりになって説明すると摂津は一瞬きょとんとしてから


「プッ」と小さく噴出した。



「バッカ見てーあんたヤンク●なわけ?」

小刻みに肩をゆらして笑う攝津に私はムッと眉を寄せる。



『んなわけないじゃん。私はヤン●ミほど強くないっての・・・。』



まだ笑いのおさまらないらしい攝津に私は例のごとく口止めをする。



『皆本にも言ったけど、コレ、内緒な。正当防衛とは言え、
      他校の生徒に手だしたとかばれたらシャレにならん。』



「わかった。」


そうは言うが、笑いながらの返事に少し不安を覚える。


本当に大丈夫かよ・・・




そしてやっと、摂津の笑いが収まってきたところで私は口を開いた。




『なぁ、何でそんなになるまでバイトしてんの?
                   そんなにお金たりない?』


土井先生が言うには、お前の両親が残した金が少しではあるが
                   確かにあるそうじゃないか


そんなに摂津が根つめて働く必要はあるのか?



「・・・別に、高校を卒業できるくらいの金はある。・・・でも、
それじゃ俺は生きていけない・・・大学にも行きたいと思ってる。

だから、とりあえず働いて、稼げるだけ稼いどく。」



真剣な表情の摂津に私は少し眉を寄せる。



なんて子供らしくない考えだろうか・・・

コイツの生い立ちを考えれば仕方がないかもしれない。

でも、これは、こいつがこんなになるまでがんばっていて、

それでも「仕方がない」なんて言葉で終れるわけがない。


もう少し、大人を頼ったって罰はあたらんよ・・・




「それに俺、金好きだし。」



摂津はそういって二カリと、歯を見せて笑って見せた。



「金があれば何だって買える。」



『あっそ・・・』



なんだかコイツらしい考えだと思って小さく笑うと

摂津はまた私のほうを見て、今度は微笑んで見せた。



「俺がさ、こう言うと、よく「愛はお金で買えない」
とか説教じみたこと言われるんだよな。
あ、この学校の奴らじゃないぜ?

でもさ、俺。そう言われんのすっげー嫌いなんだよな・・・
愛がお金で買えないことなんて分かってる。
だってそれは商品なんかじゃないし、値段をつけられるもんじゃない。

そんなの知ってるさ、
ていうか、愛をお金で買おうと思ったことなんてないね。

だから、そういうのって屁理屈で、
揚げ足を取ってるようにしか思えないんだよな。」




「あんたはどう思う?」まるでそう言っているように
攝津は私の目をじっとみつめる。



『・・・私も好きだよお金。
摂津の言ってることも間違ってないと思う。

なぁ、こんな言葉知ってる?

―人間よりは金のほうがはるかに頼りになりますよ。
             頼りにならんのは人の心です。―』




「・・・知らねぇ・・・。」



『尾崎 紅葉って言う、昔の有名な小説家のおっさんが言った言葉。

私はこの言葉に確かにそうだと思ったよ。

やっぱり、昔の人の言葉って言うのはバカにしちゃいかんね。
そういうもんなんだよ・・・

だから、私はアンタの考えになんも言わないし言えない。』



すると、摂津は



「・・・そっか。」


と、また小さく笑った。



『ほら、話してやったんだから早く寝ろ。摂津は色んなヤツに
心配かけてんだかんな・・・』




「・・・ソレ。ヤダ・・・。」




は・・・




『何が・・・?』



「その"摂津"って言うの。」



・・・・んなこと言われても摂津は摂津だしな・・・



わけが分からんというような微妙な顔をしてると



「俺、摂津とか呼ばれなれてないんだよな。なんか変な感じする。

きり丸でいいからさ・・・。」



『・・・きり丸・・・ね・・・つーかお前
なんか微妙な敬語もなくなってんじゃん・・・。』



「だってさ、アンタに敬語って。なんかめんどくさいよ。」



どういう意味だコラ。


『・・・ま、親しみやすいって意味にとらえといてやる。』




「そういうこと・・・慎センセ。」



『・・・何その呼び方・・・』


「何?いつも先生って呼べって言ってんじゃん。」



いや、そうだけどさ・・・


なんか・・・



『小ばかにしてるようにしか聞こえん・・・』




「んなことないって慎センセ。」




・・・ま、いっか・・・



『はい、いい加減もう寝る!私も仕事で忙しいんでな。』



またワシャワシャとせっ、・・・きり丸の頭をなでると

こんどは少し照れくさそうに笑ってから目を閉じた。






数分後、小さく寝息が聞こえた。





『・・・やっと寝た・・・・。』



今日は疲れた・・・


そう思いながら、部屋の電気を消して、ドアに手をかけた。




早く元気にならんと土井先生に泣かれるぞ・・・



部屋からでてドアを閉めると小さく息を吐いた。





















「・・・ちょっと、なんでアンタが
               きり丸の部屋から出てきたわけ?」









『げっ・・・。』




視線をずらしたその先には見覚えのあるパッツン。




神様、私の苦悩はまだ終わらんのか・・・・

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