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『はーい、いつものことながら私から言うことは特にないんで、
                       はい、解散。』


ソレと同時にチャイムが鳴り、みんなわらわらと帰り支度を始める。



やっと、今日という日が終わるような開放感に少し息を吐いた。

終礼の時も机に突っ伏して寝ていたはずの摂津は


終わりのチャイムとともにムクリと起き上がり
自分のカバンをひっつかむと、さっそうと立ち上がった。




「きりちゃん、今日もバイト?」


少し心配そうにつぶやく猪名寺に摂津は笑顔をみせる。


「おーそう!もう少しで給料日だしな〜」



「きり丸、最近バイト多いねぇ〜働き過ぎじゃないの?」

福富までもが心配そうにつぶやいた。



「だぁ〜い丈夫だって!!なんでんな心配そうにしてんだよ!」



ケラケラと笑い、元気そうにしているが、

どう見ても空元気にしか見えなかった。



しかし、ソレを分かっていても猪名寺はたぶん何も言えないのだろう。


彼も土井先生と同じで、心配もあるが仕方がないのかという
                      気持ちがあるようだ。


やはり苦笑いで「そっか・・・。」と声を漏らすだけだった。



「じゃな!!」



教室を飛び出す摂津に


パラパラと「おぉ」とか「またね」とか、
                  そんな言葉が向けられていた。



どうしたもんかね・・・


ボーっとその姿を目で追ってから、私も職員室へ帰るべく教室を出た。








今日の摂津を見ている限り、
            本当にアイツはいつか倒れてしまうと思う。



そらまぁ、土井先生もあんだけ心配するわなぁ・・・


そんなことを考えて、静かな廊下をひとり歩いていた。


生徒たちはまだ教室でたむろしているのだろう。

大体いつもそうだ。




そうして、職員室へ向かう途中の下足に通りかかったとき、


ロッカーの前でうずくまる人影が見えた。


瞬間、嫌な予感がしたが

焦らず目を凝らしてしっかりと見てみる。



見えたその光景に、私は頭を抱えたくなった。


生徒がうずくまっている。





摂津だ。








少し、小走りにかけよってそっと肩を叩いた。




『おい、摂津。大丈夫か・・・?』




声をかけるとピクリと肩を揺らし、顔を上げた。



「あー・・・いや、ちょっとふらついただけっス。」



そう言った声はとても小さくか細かったし、顔も赤い。

心なしか息も荒い。




こりゃあ、熱でもあるな・・・




摂津のでこに手をあてると、

      案の定普通の体温よりも暖かな熱が伝わってきた。




小さくため息をつくと、そばに置いてあった摂津のカバンを


背負い、摂津の腕を私の肩にまわした。



『ほい、立てるか?』



ゆっくりと立ち上がると少しふらつきながらも
              摂津はおとなしく立ち上がった。



『ゆっくりで良いから、歩くぞ・・・』



相当しんどいのだろう、摂津は何も言うこともなく、頷きもせず

ただゆっくりと足を動かした。




いくら摂津が細身とはいえ、自分よりいくらか背の高い青年を
支えながらあるくのは少しきつい。


ていうか、摂津のカバンも背負っているのだ。


いや、まぁカバンはとてつもなく軽いのだが。

おそらく教科書類が入っていないのだろう。




(ロッカーか教室の机の中だなこりゃあ・・・)



そんなことを考えつつ、さっきまで職員室へと向かっていたルートを
変更し、生徒寮へと向かう。




正直言って摂津の部屋は知らんが、3年3組の部屋はだいたい分かる。



とりあえずそこへ向かって探すしかないだろう・・・




あぁ・・・面倒なことになったな・・・






くそぉ〜重てぇ・・・

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