4

 職員室に戻ると、私の隣の席には人の影があった。

私の隣は副担である土井先生だ。



彼もまた、2限目に授業がないようだった。

少しうなだれたように顔を突っ伏している。



『・・・あの、土井先生・・・どうかされましたか・・・?』



どうにも気になってしまい、自分の机に荷物をおいてから
                      声をかけてみた。


「えっ、あぁ・・・柏木先生・・・。」



私の声に反応した土井先生は顔を上げて
               少し困ったような表情を浮かべた。


「いや、少し心配事というか・・・。」


うつむき加減に少し頭をかいてみせるその仕草に、

少し、『心配事』というものに思い当たるものがあった。



『・・・摂津のことですか?』


その言葉に土井先生は驚いた、というように私の顔を見つめた。


「・・・まだ、ここに来て間もないのに・・・良く分かりましたね。」



『いや、まぁ・・・摂津の事情とか、土井先生とどういう関係か、
            とか聞いてましたし・・・それに・・・。』



あなたの顔が・・・



      あまりにも



           子を思う父親のようだったから・・・





そう続けようとしたが、言葉を飲み込んだ。



「それに?」


なんだか私がそんなことを言ってはいけない気がした。

別にそれは悪い言葉ではない。

   決して。


それでも、彼らのことを第三者の私が口にするのは少し気が引けた。




『・・・いや、なんでもないです。』



苦笑いを浮かべてそう答えると、
         土井先生は少しいぶかしげに首をひねっていた。



『摂津のことで何か?』



「あぁ、その・・・最近またバイトを増やしたようで・・・」


ため息混じりにこぼしたその言葉に私は頷いた。


まぁ、そういう話だろうなぁ・・・今日遅刻してきてたし。



「・・・あいつの事情を考えればしょうがないのかもしれない
と、思いつつも少し働きすぎじゃないかと思ってしまって・・・。」



まぁ、どれだけ働いているのかは私は知らないけれど、

とりあえず相づちをうつ。



「・・・一応、あいつの両親が残したお金は少しではありますが
あるにはあるはずなんです。だから・・・」



『そうですね・・・心配です。今日は1限目遅刻してきたし、
授業中は終始眠りこけてたし、相当疲れもたまってるみたいですよ。』


すると土井先生は渋い表情で口をひらいた。



「・・・やっぱり、そうですか。私も最近気にかけているんですが、
    見ていると少しふらついていたりして・・・。」


本当に困った、という表情を浮かべている土井先生に

不謹慎にも私は少し笑いそうになってしまった。

本当に父親みたいだ。



『私も担任ですからね。ちゃんと気にかけてますよ。』


すると、土井先生はきょとんとした顔で再び視線を私に合わせた。



「ははは、・・・柏木先生は優秀ですね。」


私が新人のころはこうは行きませんでしたよ、

と、小さく笑いながら言う土井先生に私も少し口もとを緩めた。

[ prev / next ]
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -