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『おはようさん。何、寝坊?』
「まぁ、そんなとこっス。」
眠たそうに重いまぶたの摂津はのろのろと自分の席に着いた。
昨日夜遅くまで遊んどったんか?
そんなことを考えてからフと、
いつか土井先生の言っていたことを思い出す。
彼、摂津きり丸には両親がいないらしい。
いや、両親というか肉親がいないそうだ。
理由はあまり深く聞かなかったが、あの歳で天涯孤独の身なのだ。
土井先生がちょいちょい面倒を見ているらしいが・・・
遅刻の理由は十中八九・・・・
(バイト・・・かね・・。)
なるほど、それで猪名寺の表情がぎこちなかったわけだ。
ま、しゃあないわな・・・
私には何も言えん・・・
そう思い、私は授業を進めた。
まぁ、案の定というか、摂津は遅刻しておきながら
終始眠りこけていた。
終業のチャイムが鳴ってから、小さくため息をつくと
摂津の席へと足を運んだ。
『おーい、摂津。』
「・・・ん・・・?」
『・・・お前さァ、がんばんのもいいけど、私の授業聞けるくらいには
ちゃんと休養とれよな・・・。』
「あぁ、・・・まぁ・・・適当に・・・。」
あんま聞く気なさそうだけど、
これ以上言っても無駄そうなのでやめておく。
『じゃ、次の授業はちゃんと起きてろよ・・・。』
担任として少し次の授業へとフォローをしてから教室をでた。
猪名寺はやっぱり摂津を見て苦笑いを浮かべていた。
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