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教室に入ったのはチャイムが鳴る1分ほど前だった。



あいかわらずガヤガヤとうるさい教室をみまわして皆本の顔を捜す。

するとまぁ、一番後ろの席
佐武の机に加藤と皆本の三人がたむろしていた。




『おい、皆本。』


教室の奥まで足をはこび、皆本たちの前で声をかけた。



「あ、慎。」



そうつぶやいて皆本が視線を私にあわせると
加藤はぎょっとしたように私の顔をみた。


私の顔をまじまじとみてから再び驚きの表情を浮かべる。

佐武も同様だ。



何だ 何だ?



『お前、昨日のことは絶対誰にも言うなよ。先生にもな。』


「あぁ・・・アレね。別に良いけど・・・」



『ん、じゃ、それだけ。』



そう言って立ち去ろうとすれば、慌てたように
加藤にジャージの裾を掴まれた。


「ちょ、まった!!」



『なに?』




「いや、何じゃなくてさ!!ていうか、俺のほうが何って感じ!!」


やたらあせっている加藤の言葉に佐武も深く頷いている。


「何!?昨日のことって!?ていうかその怪我何?!
金吾はなんで慎ちゃんのこと呼び捨て?!最初違ったよなぁ!?」




説明すんのはすこぶるめんどくさい。

それに、加藤にいったら広まりそうだ。

それじゃあ皆本に口止めしに来た意味がない。



『まぁ、色々あったんだよ・・・気にせんでよろしい。
皆本には言ってやってくれ、先生をつけろとな・・・あ、お前もか。』




そう言っていすに座ったままの加藤の頭をぽんぽんと軽くなでた。


そして、ジャージの裾を握っている手を軽くはらってその場を去った。




教卓についたところでちょうど始業のチャイムが鳴る。




『あーい、みんな自分の席つけよー。』



私が声を出したことで教室中の生徒の視線がふっとこっちを向く。


そしてその瞬間、やっぱり私の顔をぎょっとした目で見て固まる。



あからさまなその反応に私は苦笑いを浮かべた。



「せ、先生・・・どうしたんですか、その顔・・・。」



おそらく今、全員が思っているであろう気持ちを
代表して猪名寺が口をひらいた。



『ま、昨日ちょっと怪我しただけだから・・・あんま気にせんとって。』



少し困ったように頭をかいていると

「それ、答えになってないし・・・」


と、笹山から小さなボヤキが聞こえたが、聞かなかったことにする。



『ままま、私のことはともかく。授業始めんね。えー欠席は・・・』



無理やりごまかして教室を見回すと一番後ろに空席をみつける。



『あれ、摂津がいないな・・・休みか?』


そうつぶやくと、前の席の猪名寺が少し言いにくそうに口を開いた。



「あー・・・きりちゃんは・・・たぶん遅刻ですよ。」

何故そんなにも苦笑いで言うのか少し気になったがスルーしておく。


『ふーん・・・そっか。』


じゃ、まぁ気をとりなおして授業を始めますかね・・・


そう思い、今日やる範囲の教科書のページを言おうと口を開いた時、




― ガラ



ちょうど教室のドアが開いた。





「ちっす・・・。」



あくびをかみ殺しながら眠たそうな摂津が入ってきた。

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