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「はぁ、はぁ・・・っ!?柏木先・・生?」




なんだか良く分からないが、私とぶつかった、

おそらく数人の男に追われているのは皆本のようだ。





『いったい何したの・・・君。』


若干あきれたように皆本を見下ろすと

皆本はばつが悪そうに顔をゆがめた。




「・・・まえに喧嘩したやつの高校の・・・。」


気まずそうに口ごもりながらもそれだけ言った皆本の言葉に

私はなんとなく状況を理解する。




『なるほど、あだうちってやつね・・・。』


前喧嘩したやつにはおそらく勝ったんだろう。
まぁ、喧嘩に勝てるくらい皆本は強いが、さすがにあの人数に一人は
厳しいらしい。


逃げてきたと言うわけだ。



なにがあって喧嘩になったのかは知らないが

数人対一人とは卑怯な奴らだ。



「皆本ぉぉ!!見つけたぞ!!」




ガラの悪そうなやつらがだいぶ近づいてきた時、

皆本は小さく舌打ちをすると、再び走り出そうと立ち上がった。



「先生もこんなとこから早くどいたほうがいいっすよ。」


そう捨て台詞をはいて、すばやく立ち去ろうとした皆本の肩を


私は思いっきり掴んで引き寄せた。



「なっ!?」



『まぁまぁ、もう逃げんのも疲れたっしょ。
             ここは教師である私に任せなさいよ。』


えらく面食らった顔をしている皆本にそういって、

また走り出さないように服のすそを掴みながらも私の後ろへとやる。



「はっ?ちょ、先生。マジで危ないから!」



『まぁ、まぁ、死にはしないから。』

何がなんだか分からない、といったようにあせる皆本に対し
私はなぜか冷静だった。

まぁ、たぶん自分のこの顔のせいで普通の人より不良というものに
                   慣れているからだと思う。

あと、酒で酔ってたからっていうのも大きく関係してると思う。


念のため言っとくけど、私はヤンク●じゃないんで
メチャメチャ強いとか、そういう設定は生憎持ち合わせていない。


それでもまぁ、強気で入れた。





「あぁ!!?なんだテメェー!?」


「皆本の女か?!」


「そこどいたほうがいいぜ姉ちゃん、怪我したくなかったらなぁ。」



ゲハハハハッと、なんとも下品な笑い声を上げて男たちは
                 私と皆本の前に立ちはだかった。



ぜひ言っておきたいんですが、君たち高校生より私は年上ですよー

姉ちゃんってオイ、どこの悪役だお前たちは。



『なに、君たち。大勢で一人おっかけて・・・恥ずかしくないの?』



「うるせぇな!!てめぇには関係ネェだろ!!?」



『おおありだっての・・・うるさいし不快なんだよ警察呼ぶぞコラ。』



少しイラっと来たのでいつもよりさらに眉間にシワを寄せて

ずいぶんと低い声を出して見せた。



「な、なんだてめぇ・・・。」



さすが、地元のレディースの総番とまで噂された私の顔である。
若干相手がたじろいている。



「ちょ、柏木!。」



相変わらずあせっている皆本は無視である。

つーか今苗字呼び捨てにしたな?!




『ま、私この子の知り合いなんだわ。何があったか知んないけど
                     今日は見逃せよ。』



「あ゛ぁん!?んなことできるわけねぇだろ!ざけんじゃねぇ!!」



『ふざけてねぇよ。クズが、
          テメーこそふざけんのは顔だけにしとけよ。』


「んだとてめぇ!!?」



あっ、と思ったときには遅かったりする。

こっちもイラっときたからって本当のこと言っちゃまずかったか〜

内心、結構陽気に考えながら
        拳をふるってこっちに向かってくる男を見ていた。


次の瞬間、結構な衝撃が左ほほを襲う。




ガッ





「!!?先生!!」




思わず私の後ろにいた皆本は大声を上げる。



「あぁ?今コイツなんつった?」




「先せ『先生っつったんだよ・・・』!?」


殴られた左ほほがひりひりする。
少しよろけたからな、相当な力で殴られたようだ。


「はぁ?!てめぇ先公かよ!?」

「こりゃあ傑作だな!!!」


「熱血先公気取りかよ!!ガハハハハ!!」


頭がくらくらする。
やっぱり飲みすぎたかな・・・


しかも口が切れたようだ。
血の味がしてしゃあない。


『別に私は熱血先公気取ったつもりはないよ・・・』


そうだ、どっちかっていうとこういうのはめんどくさくて仕方がない。


けどまぁ、昔はこんなことにしょっちゅう巻き込まれてた。


この目つきの悪い顔のせいで・・・


ヤバイ、なんか変なスイッチが入りそうだ。




『オイ、お前らよぉ、女の顔殴っといて、
         タダですむとは思ってねぇだろうなぁ・・・・・』



口の中にたまった血をペッと吐き出す。

今、私の眉間のシワは最高潮に深い。



あまりの目つきの悪さに、ヤローどもはたじろき
                    若干変な汗をかいている。



「おっ、おい、お前喧嘩なんて出来んのかよ!?」


酷くあせって私の肩を掴む皆本に、無表情に顔を向ける。


「っ!?」


『皆本、教えといてやるよ・・・・』




「はっ?・・・・」




『喧嘩ってのはなぁ・・・』













びびらしたもん勝ちだ

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