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山村の爆弾発言投下直後。


授業中にもかかわらず騒がしかった教室のざわめきがピタリと静まった。



福富のいびきが教室に静かに響いている。



そして心なしか教室中の視線を私が独り占めしている気がする。


おいお前ら何気に話聞いてただろ!!




「ね?慎ちゃん・・・ダメ?」


いやいや、ダメもなにも私は教師だからね?

何回もいうけど君の担任だからね?




『ていうか何故そういう話になるのかまったく分からん・・・。』



「えぇ〜だって慎ちゃん年下苦手なんでしょ?
                 じゃあ克服しなきゃ〜。」



なぜ?


別に年下苦手な女なんて世の中にゃ五万といるし・・・



『別に年下苦手でも死にはしないし。』



「ん〜死にはしないけど、そんなに男選んでたら
                 結婚なんてできないよ〜」



うるさいな・・・私はまだ22だ。


そりゃまぁすでに結婚して子供産んでる友達とかいるけども・・・



『山村にソレを心配される筋合いはないよね・・・?』



「えぇ〜そんなことないよぉ〜」


少しほっぺをふくらませて明らかに不満そうな表情を浮かべる山村に

私は小さくため息をつく。


『まぁ、君はモテるだろうし、
       遊びたいざかりなのは分かるけどね・・・
            あんま教師をからかうもんじゃないよ。』


山村は何か言いたげな表情で私をみる。



『それに、私みたいな女はお勧めしないよ・・・。』


遊ぶのはいいけど焼けどしない程度にね・・・

自分の高校時代のつるんでた男友達なんかを思い出して内心苦笑い。



まぁ、高校生にはよくあることなんかねぇ〜

一度は悪い女に捕まるもんさ・・・。



『ハイハ〜イ、何故か知らんが静かになったんで授業を再開しま〜す。』




「「げぇー!!」」


四方八方から非難の声が上がるが
どうせお前ら聞いてなかったんだからいいだろ

と思ってしまった。



『こんどこそ加藤。はい49ページの英文読んで。』



「うがぁ〜わかんねぇ!!慎ちゃんなんか俺の理解できない
難解な文字で教科書がうめつくされてんだけど!!」




『まぁ、それが英語だよね・・・』



「バカ!団蔵おまえ最初の方の単語くらい読めるだろ!?」


我慢ならんというように加藤の斜め前の席に座る二郭はどなりつける。



「えぇ〜・・・そー ゆー ますと りーぶ as ろんぐ as
                       ゆー can・・・」



「So you must live as long as you can!!なにその気の抜けた発音!!」




おぉう・・・二郭のスパルタ特訓が始まってしまった・・・。



「ほら、これくらいなら訳できるでしょ!!」


「えぇ〜わかんね〜・・・あなた しなければならない 
生きる 長く あなた できる!!よし来たコレ!!俺できた!!」



「バカ団蔵!!なんだよその片言!!宇宙人かお前は!!
【だから君はできる限り生きてなくちゃならないんだよ】だ馬鹿!!」



いや〜それにしても二郭はしっかりしてるねぇ〜・・・




「ホラ、次の文は!?」



「えぇ〜っと・・・」





つーかコレ私いらなくね・・・?






終業のチャイムがなってもなお行われている二郭のスパルタ英語授業。

まぁ、山村との会話がはぐらかせたのでよしとする。




『じゃ、まぁチャイム鳴ったんで授業終わりにしま〜す・・・。』



次の時間体育なんだから遅れんなよ〜と

小さくつぶやいてから教室を出ようと扉に手をかけた。









「先生。僕はそんなことないと思いますよ。」




教室の扉に手をかけながら振り向く。


立ち上がってまっすぐと私を見つめる目は黒木のものだ。





『・・・・何の話?』



気づかないフリをして教室から出て行った。


出て行く時、黒木の薄く笑う顔が見えた。




くそ・・・プレイボーイがここにもいたか・・・










『それに、私みたいな女はお勧めしないよ・・・。』









とんだダークホースがいたもんだ

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