act.2 先生とプレイボーイ





『He acknowledged it as true. んじゃあ、佐武。
              【acknowledge】の意味を・・・』





「ああぁ!!虎若!!てめっ、なに俺の焼きそばパン食ってんの!?」




「あぁ、お前のカバンからはみ出てたから。」


「はみ出てたから何!?なんでソレをお前が食うにいたったわけ!?」



「あ〜うめぇ〜」



「テメェ!!表出れ!!張ったおす!!」



「ちょ、団蔵うるさいんだけど・・・。」






『・・・やっぱ福富。【acknowledge】の意味を・・・』




「しんべヱ!!ホラ起きなって!あてられてるよ!!」



「ん〜もう食べられないよ・・・。」




「なんて王道な寝言なんだ!?」




「きりちゃん・・・そこはどうでもいいよ・・・。」





『・・・二郭。【acknowledge】の意味を・・』




「…の存在[正しさ]を認める。です。」




『はいOK。んじゃあ全部訳して・・・黒木。』




「はい、【彼はそれが真実だと認めた】です。」




『はーい完璧です。』





確かこれは。

新学期二日目の授業だ。




ていうか、私が初めての授業をする日だ。

うん。確かに昨日自己紹介をしたので間違いないと思う。



まぁ、5限目だし、授業がだるくなってくるのもわかるけど・・・





「兵ちゃん。今日の合コン4人だけどさぁ、あと二人誰か来れるヤツいるかな?」



「まぁ、いるでしょ、喜三太とか団蔵とか・・・。」


「ん〜んじゃメールしとく。」





これはないだろ・・・


授業中に普通に携帯だしてんじゃねぇよ・・
なに?こんなんだったっけ?私の高校時代?


いや、授業中携帯使うヤツなんてめちゃくちゃいるが

こうも堂々と教師の前でメール打つヤツはいなかったはずだ。




『・・・なぁ、黒木。いつもこんな感じなの?・・・授業。』


「えっ、まぁそうですよ?」



『・・・そ、つーか君らはどうやって勉強すんの?こんなんじゃ授業になんないっしょ。』



「まぁ、主に教科書みて自主勉強ですね。」



『まじ学校来る意味ねぇーな・・・。』



「そんなことないですよ。分からないところは先生に聞けますし。」



『・・・お前って本当に出来た人間だよな・・・。』



生徒の鏡である黒木の姿に少し目頭が熱くなる。


なんだこの違いは。


何故こうも違ってくるのか・・・。

教室の後ろをみれば佐武と加藤のプチ乱闘騒ぎに、爆睡し続ける福富。

なんの計算かは知らないがひたすら電卓をたたく攝津。

前の席でありながら堂々と携帯をいじってる夢前に笹山。





『くそぉ・・・殴りてぇ・・・』




誰にも聞こえないようにつぶやきため息をついた。


授業をしていてもまるで聞いている気配がないのだ。



完璧に教師はアウェイである。



『ま、いつもこれならしゃーねぇな。分からないところは何でも聞いてネ。』




なんともいえない気持ちになり、教卓にひじをつく。


ふと、視線を左に移すと山村の幸せそうな寝顔が・・・



このやろぉ・・・寝てんじゃねぇ!



そこで私は立ち上がると山村の頭を軽く出席簿でたたく。




『お〜い、起きろ〜そんなに先生の授業は面白くないか?』



新学期が始まって2日。早速心が折れそうな今日この頃です・・・




「はにゃ〜」



『あ、起きた。』



おそらく福富と同じで爆睡しているであろう山村が起きるとは思っていなかった。


山村が起きたからといって授業が出来るわけではないが

少し胸のうちがスッキリしたのは事実である。




「へへ〜僕慎ちゃんにそうやって起こしてもらうの好きなんだ〜」



少し嬉しそうにほほを緩めてムクリと顔をあげて山村はそう口を開いた。


『?何が。』



「だからねぇ〜そうやって優しく出席簿でたたいて起こしてくれるの〜」




『ふ〜ん・・・まぁ、私としてはずっと起きててほしいけどね・・・』




「はにゃ〜慎ちゃんなんか反応冷たい〜」



いやだって、他になんて返したらいいかわかんないし・・・


『ん〜これが通常だからあんま気にせんといて・・・。』




そう半目でやる気のなさそうに答えたのが気に触ったのか
山村は少し口を尖らせ、不満そうな顔をしてみせる。


なんか山村は年上のお姉さま方とかにモテそうだなぁ〜・・・
すんげぇ可愛がられてそう・・・



「・・・ねぇ慎ちゃん。今何考えてる?」



『は?何で?』



「だって僕の顔じ〜っと見てるから。」



『あぁ・・・いやなんかね、山村は年上のお姉さま方にモテそうだなぁ〜って』



相変わらず山村の顔をじっーと見ながらそんなことをこぼすと

山村はなんとも意外そうに目をぱちくりとしばたかせた。


『なに?その意外そうな顔?ちがった?』


少し首をかしげて見せると山村は小さく顔を横に振った。



「僕はまぁ・・・色々な年齢層にまんべんなく愛されるかな〜」


あらまぁ、こりゃなんというプレイボーイ発言。

やっぱモテる人種っていうのは一味ちがうねぇ〜


内心苦笑いをしていると目の前の山村は小さく笑みをこぼした。


『何?』



「ねぇねぇ。慎ちゃんがそんな風に僕のこと思ってるってことはさぁ・・・慎ちゃんも僕みたいな年下好き?」


下から私の顔を覗き込むようにぐっと顔を近づけた山村はそんなことを口にした。



あっ、そっか。私もコイツの年上のおねぇ様に入るのか・・・

なるほど、と今更ながら納得しつつも私は山村から顔を遠ざける。



いや、だってマジに近かったから・・・


これはおそらくからかわれているのだろう。


ここは男子校だし
女性教員で年齢のそう変わらない私はコイツらのかっこうの餌食なのだと思う。



『いや、私は一応教師で君の担任だからね・・・そういう質問には
ちょっと答えかねるかな〜』



適当に言葉を濁して回避しようとするが



「へぇ〜否定はしないんだ・・?」



くそぉ・・・なんだその笑みは・・・

年下の癖に余裕ぶりやがって・・・


ていうか担任教師からかってんじゃねぇよ!!



なぜか、闘志の燃えたわたしは口元をひくりとさせた後、
少し皮肉をこめて口を開いた。



『いや、私はどっちかっていうと年上とかの方が好きかな
年下はちょっとね・・・弟キャラとかってやつ?
               ああいうの苦手なんだわ。』



すると、山村は再びきょとんとした表情を浮かべた。


そして・・・・








「・・・じゃあ、こんど僕とデートしない?」







などとおっしゃいました。










は?

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