act.17 先生と考える生徒



『や、山村・・・』











「・・・・。」









『おい、山村ってば、・・・。』


















少し強めに引かれている繋がれた手を引っ張り、


無理やりにでも山村の歩みを止めさせた。













ずいぶんと歩いたようで、三人組の姿はもうどこにも無い。






気づけば小さな公園に着いていた。











『どうしたの、お前。いきなり・・・』











「だめ、今日は喜三太って呼んでくれないと返事しない。」










なに、ガキみたいなこと言ってんだよ・・・











『・・・喜三太。』









「・・・なに?」










『どうかした?何で急に・・・』














「・・・キスしたの怒っちゃった?」









一度とめた足を再び動かし、公園内に入ると


近くにあった木のベンチに腰掛ける。














『あー・・・んーっと・・・』





「それとも、僕なんかにキスされても何も感じないかな〜。」







『おい。』






まじでどうしたんだよ・・・






自嘲するように笑みを浮かべる山村に


自然と歪んだ顔で小さくため息をつく。














「・・・・だって、今日は僕だけの慎ちゃんだったのに、
              兵太夫たちにかまうから・・・。」






『えー私がかまうっつーか、絡まれてたんだけど・・・。』






すねたように唇を少し尖らしてみせる山村に


本当はあまり聞きたくも無い質問を投げかける。









『・・・あんたさ。私のことからかってただけなんじゃなかったの?』










「・・・・うん。」








少し俯いてから、山村は私のほうへと顔を向けなおす。









山村の目には、めずらしくも眉を八の字にさせた

情けない顔の私が映っていた。












「でもね。今日だけは、今日くらいは・・・僕のことだけ見てほしいな
なんて、思っちゃったの。」










そーか、思っちゃったのか・・・












「さっきさ、慎ちゃんが笑ったとき。僕、すっごくうれしかったんだー。」









そんなに私って笑わないだろうか・・・



いや、そんなことないだろ。






そんなに希少価値ないよ?たぶん。











「だから、僕以外の誰かのせいで、慎ちゃんの顔が、
あせったり、困った顔になったりしたことに、なんだかすっごく胸がモヤモヤした。」










隣に腰掛けて向かい合っているんだから

もとから山村との距離は近い。




それでもさらに、山村は私の手を握ったまま顔を近づける。












ついさっきのことが頭をよぎって少し引き気味になる私の体。










彼はどうしてそんなにも切なそうな表情を浮かべるのか











「僕だけを見てって思ったの。」











『それは、』









「うん。ヤキモチ。」







「へへへ。」とふにゃりと笑って見せた山村に



私の頭は面白いくらいに働こうとしなかった。













「・・・今思えばさ、慎ちゃんが朝帰りしてきたときも
すっごい気になったの。・・・誰と、どこにいて、何してたのかなって・・・」









さらにぐっと近づいた山村の顔に、


ほぼ反射で目をつぶると、まぶたに小さくキスをおとされる。








なんだこのゲロ甘な雰囲気・・・















「初めてなんだ・・・こんなに、誰かを僕につなぎ止めておきたくなったのは・・・」









それから、目じり、鼻、額と、リップ音をわざと立てながら


山村はキスを落としてくる。








『ちょ、たんまっ!!』







「ねぇ。ちゃんと僕のこと見てる?」







手をつながれていることで、押し返すこともできず、

ただひたすらにそこ行為を受け入れることしかできない。













『み、見てるからっ、マジでたんまっ』









なに?なんなのほんとに!!



最近の若者って皆こうなの?!






草食系が多いとかうそじゃん!!バリバリの肉食だらけじゃん!!










度ストレートな言葉に心底弱い私は、うまく頭も回らずに



抗議の声を上げることで精一杯だった。









「今日だけなんていったけど、ダメ。明日も、明後日も・・・
それから明々後日も。ちゃんと僕のこと見ててね。」








そういってから名残惜しそうに山村の手と繋がれた私の手にキスを落とす。














もうどうすればいいのかも分からなくて



浅い呼吸を繰り返して、熱くなった頬をできるだけ見られないように俯く。












「へへっ、慎ちゃん顔真っ赤。」










『うるさいっ!あたりまえじゃん!!』














「・・・ね。もう一度ちゅーしていい?」








そっと唇を指でなぞられ、驚いて顔をあげれば



綺麗な笑みを浮かべた山村と目が合ってしまった。









『や、やだ!!』







「ダメ。」







ダメってなんだこら。




聞く意味ねぇーじゃねーかとか






口にするまもなく、もう一度唇が重ねられた。













もう今の私は頭から煙が出ていてもおかしくないかもしれない。




なんでこんな年下にいいようにされてるんだ私・・・








頭の中で、一昔前のアイドルの歌のフレーズがふと頭をよぎる




男は狼なのよ〜ってか・・・・?

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