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「おいしかったね〜」











店をでれば時刻は12時。








ちょうどお昼時だが、今しがたパフェを食っていたため


どこかの店で昼飯を食べようなんて気には絶対ならない。









山村の話にテキトーに相槌をうってぼーっと考える。













もしかして、まだなんか続くの?これ・・・















これからどーするのこれ。







チラリと視線を下に向け、山村と繋がれた自分の手を見て


小さくため息をこぼす。













恋人つなぎだ。













もう抵抗するのも面倒で、


されるがままに一歩ほど前を進む山村に少々引っ張られるような形で歩く。











「・・・・ねー。」







『なに?。』







何を言っていたのかはテキトーに相槌を打っていたから

はっきりと理解していないが、




ペラペラとしゃべっていた山村の声がピタリとやみ



少しだけ低くなった声色がフッと私の鼓膜を揺らした。














「・・・今日、そんなに嫌だった・・・?」











人通りの少なくなったわき道で、ピタリと足を止めた山村が、


つないでいた手を離し、私の方に振り返って眉を八の字にさせた。










『え?』










「やっぱり、楽しくなかったかな・・・。」








妙に落ち込んだ雰囲気の山村に私の心臓はドッと音を立てて早まった。






『な、なんで』








「・・・だって、慎ちゃん。ため息ばっかついてるし、
               あんまり笑わないし・・・。」







『べ、別に笑わないのはいつものことじゃん。』







なんだこれ。






ほんとにナニコレ。













私の心臓は休むことなく早めのリズムを刻んだままだ。







あせってる。










今の今まで、全然私の態度を気にした風でもなかった山村に

そんなことを言われてしまえばさすがに罪悪感がめばえるというか・・・












たしかに、よくよく考えてみれば





このデートは元はといえば失態をおかした私が出した条件なわけで、




口止めをかねてるわけなのだから、逆に私が山村を満足させるべく


接待するべきなのだ。





それがどうだ柏木慎。










今現在年下にめちゃくちゃ気を使わせているではないですか。















年上として、いや、・・・大人として終わっている自分・・・




















『・・・・ごめん。き、・・・喜三太。』












山村の顔を直視できなくて、俯き加減にそうこぼすと





山村の息を呑むような声がもれた。












『パフェはおいしかったし・・・別に楽しくないわけじゃない・・・
た、たぶん・・・。なんか、私が意地はってたって言うか、
だからっ、お、お前が落ち込む必要ない・・・よ、ごめん。』










なれない雰囲気に、かみかみで謝罪して、




おそらく赤くなっているだろう自分の顔を見られないように






背の高い山村の頭を無理やり抱え込むように抱きしめた。














いきなりかがむような形になった山村は驚いたのか


一瞬息を詰まらせてから小さく声を上げて笑った。









「へへへっ、慎ちゃん心臓の音、すっごく早い。」












『そうだよ馬鹿。すっげーあせった・・・
        お前が泣きそうな顔するから・・・』













私に抱きしめられたまま、そっと私の背中に腕をまわして


抱きしめ返す山村の腕に、ひょろいくせに、やっぱり男だなとか








そんなことを考えるとまた少しだけ心臓の音が早まった気がした。
















「ごめんね、嘘だよ。慎ちゃんが全然僕にかまってくれないから
       ちょっとからかっただけだから、誤らなくていいよ〜。」






頭をあげて、私の手が山村の首にまわした状態で




私の顔を見てから、へらりといつもの調子の声と顔をみせた山村。











『・・・ダウト。・・・それが嘘だよ。私なんかに気使うな馬鹿。』













ため息をついてから、山村の首に回っていた手を顔の方へと持って行き、





緩んでいる山村のほっぺたを引っ張る。














「えへへ・・・僕、やっぱり慎ちゃんのこと好きだなぁ・・・」











また眉を八の字にさせる山村。



だけどまぁ、今回のは別に困ったからというわけじゃなさそうだから


笑い返しておく。















「あ、笑った・・・」















隣の道路を車が走り抜けていったことで

小さく呟かれた山村の声は私の耳にとどかなった。





『ん?』









「んーん。なんでもないよ。」










今度は本当にうれしそうに頬をゆるめてもう一度私の手を取って


今度は隣で歩けるように歩幅を調節した。














恋人つなぎも、今日くらいは許してやろう。









返事をする代わりにさっきよりもぎゅっと




今度は私のほうから強く握ってやった。






「あれ、喜三太?」




不意に後ろから聞こえた、聞き覚えのある男の声。





そうですよね。



これで丸く収まることはねぇーなと。


わかってましたよ、はい。




振り向けない私の変わりに足を止めて振り返った山村は。





「はにゃ?団蔵、きり丸に兵太夫。」





そう口を動かした。






まさかの三人・・・・

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