君を包む、世界に



君を包む、世界に
_____凛side









「なぁ、刹李。お前が、本当に生きたいと思う世界に生きられるようになる日まで俺は刹李の側にいる」

「それは依存しろってこと?」

「それでもいい」



顔を反らしていた刹李と、やっと目が合った。

その目が、不安とある種の恐怖に怯えているように見えたのは俺の見間違いなのだろうか。



「じゃあ、それで終了。私は彼らに近づきたくない。凛がいればそれで、凛の隣にいられればそれでいい」




_______それで終了。



つまり、彼女はハルや真琴、刹香がいる世界に戻る気がないということ


俺の側に、ずっといる


多分そういう意味だ。



たとえ自惚れだとしても、嬉しいと感じる言葉。


でも、彼女にとってそれじゃあダメなんだ。




今は俺に依存してもいい。

これから先だって誰にも渡すつもりはない。


でも、ずっと俺という存在だけを求めて生きるのは違う。

そんな暗い世界じゃなく、彼女にだって明るい世界に生きて欲しい。



まるで縋るように俺の背中に腕を周してきた刹李を抱きしめ返す。




この世界は俺だけじゃない。

宗介や愛、モモだっている。

でもそれでも。

彼女にとって本当に明るい世界はハル達も近くにいて、笑っていられる世界なんだ。





彼女にとって最も近くにあった明るい世界。

それは家族だった筈なのに。
いつの間にか双子の片割れである刹香だけが居られるようになった世界。



きっと凄く寂しかった。


凄く辛かった。




明るい世界が急に暗くて冷たい世界に変わることはきっと何よりも怖かっただろう。



そんな体験をしている刹李が、簡単にハル達とまた幼い時のように笑い合える日が来ることはそう簡単じゃない。



でも、やっぱり明るい世界で笑っていて欲しい。



だからいつかそんな日が来るまで。


そんな日が来た後も。




「守るから」


「ん?」

「刹李が独りで居ようとする今も。
いつか、本当に生きたいと思える世界で生きようとする未来も」

「さっきも同じ様なこと聞いた気がするんだけど」



刹李は相変わらず俺の背中に腕を周したまま。

その腕の力がある少し強まった。

きっと彼女は今、泣きそうな顔をしているんだろう。










「俺だけは、絶対お前の側にいる」










耳元で息を飲み込む音が聞こえた。


彼女が独りだと感じようが

彼女に最も近かった世界が彼女を拒絶しても


俺だけは絶対側に居てやる。

だからどうか。




「だから、お前を受け入れようとする世界を怖がるな。前に進め。…俺が隣にいる」



「っ、凛」



ぎゅっとシャツを掴む刹李。

そんな彼女がとてつもなく愛おしかった。


肩が濡れていく。



前に進めるようになる為に、俺に依存すればいい。
怖くなったら俺の元で泣けばいい。

憤る事があれば俺に怒鳴りちらせばいい。



そして前に進んで欲しい。



そのために。

俺が刹李にとって、何よりも近い世界になれれば良いと、そう思う。






涙を流す刹李を更に強く、抱きしめた。

















君を包む、世界に


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