いつか君が離れる、その時まで



「主、今日は何の日ですか?」
「……。私の誕生日。」

そう。今日は私の誕生日。
なのに!本丸の刀剣男士といったら!
朝から遠征(私が組んだ)に演習、出陣!
だーれも気に留めなんてしない。

唯一誕生日っぽい事といったら朝起きて襖を開けたらいきなり目の前でクラッカーが暴発、「どうだ、驚いたか」とドヤ顔の鶴丸が居たことくらいだった。当然、鶴丸は殴り飛ばした。

誕生日なんてくそくらえだっ




いつか君が離れる、その時まで




その後も皆忙しそうでわざわざ自分から今日は誕生日なの☆なんて言うものバカバカしく大人しく畑いじりを一人楽しく行っていた。


そこに私の近侍、鯰尾が現れ冒頭にもどる。



「ですよね!薬研くんが、主が一人いじけて土いじりしてるから構ってやってって!」
「何それ私子供みたいじゃん」
「あははははは」

薬研め。後で覚えとけ。
ブツブツ呪いの言葉を唱えながら種を植える私の隣で鯰尾が何か楽しそうに種を植えていく。

いつも笑顔で出陣し、笑顔で帰還してくれる、鯰尾。
彼は今日も私の隣で笑ってくれている。

「なにですか?顔になにかついてます?」

「んーん。鯰尾の笑顔、好きだなーって。」

じっと横顔を、見つめていた視線に気づいたのだろう彼が此方をむく。

「……主、何か欲しいものないですか?」
「どうしたの突然」
「主、誕生日でしょ?」
「そうだけど…もういいや。」

そう。もういいのだ。
彼の隣に、居られる。
彼が、笑っている。
なんだかそれが今、とても嬉しいのだ。

だから…、そう言ったのだけど。


「……俺は、欲しいもの、ありますよ」
「…………ん?」


ポツリと溢れた言葉。
此方を見つめた鯰尾は先ほどの優しい笑顔ではなく、真剣な眼差しで、作業していた筈の手はいつの間にか私の指を絡め取る。

「……………鯰尾?」
「主が俺の笑う顔が好きならば、いつまでも隣で笑います。でも、それだけじゃなく、“俺が隣に居る”事を主が望むのなら、俺は、それが欲しい。」
「…………………」



何だろうか、この空気は。
逃げられない。

「な、まずお……?」
「ねぇ、俺を望んで下さい。……俺が、側にいるから」

ゆっくりと、私の肩に顔を埋めた鯰尾が、囁くように言葉を紡ぐ。


そしてぎゅぅっ、と私を抱きしめる。

「今年の主への贈り物は、俺でどうですか…?」






前言撤回。こんな素敵な誕生日に、くそくらえなんて言ってごめんなさい、神様。
あ、現在私を抱き寄せてる彼も、ツクモ神だ。

「………鯰尾で、お願い、します……」







「誕生日おめでとう、雫遙。愛してますよ」












(いつか君が俺から離れる、最期まで。)


いつか君が離れる、その時まで

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