◎ 04
「何なので御座るか貴殿は!!」
声を荒げて机を叩いて立ち上がったのは莎介であった。周りは静まりかえって何事かとこちらを見ている。青年は微動だにせず何食わぬ顔で莎介を見上げる。そして暫くして声をあげて笑った。
「何って、挑発?」
「なっ!?」
「おい莎介!」
青年に掴み掛かろうとする莎介を平八は止めに入る。
「しかし平八殿…!」
そんな二人を尻目にお茶をすすって小袋から銭を出すと机に置いて立ち上がる。
「はは、ごめん。気分を害したなら謝るからさ。そのお詫びといっちゃあ何だがここは全部俺持ちにしとくから」
「っ、不要だ!」
「人の好意は素直に受けとるもんだぜ」
「誰が貴殿の好意など!」
すると青年は「まあ、いいや」と言い、背中を向けてヒラヒラと手を振り店を出ていってしまった。後を追おうとする莎介を必死に押さえる平八は店の人と客に謝り、少し時間が経ってから店を出た。
肩を落としている莎介にどう言葉を掛けていいものか悩んでいると莎介がこちらに顔を向けた。
「どうして止めたので御座るか」
「え…」
「拙者達は間違ってなど御座らん。より安全に世が安泰に向かうように戦を避けて話し合いで解決してきたのだ。一番良いやり方ではないか。なのに、何故それを他国の者に貶されねばならぬのだ?この国のやり方を否定されて平八殿は悔しくはないので御座るか!?」
堪らなくなって莎介は平八を置いて走り去っていってしまった。一人残された平八は肩を落としてポツリと呟いた。
「悔しくないわけないだろ…」
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