小説 | ナノ

 13

声の主の言葉通り、すぐさま体を屈めて体制を低くする。何かが目にも留まらぬ速さで飛んでいくのを感じ、それは見事に化け物に命中したようだ。それが致命傷となったのかもう身動き一つすることはなかった。立ち上がって骸をよく見てみると額部に角があることに気付き、こいつは鬼獣だったのかと眉間にしわを寄せた。額部に角を発見したと同時に何かに抉られたような痕も見受けられ、そこから赤黒い血液が流れ出ていた。

「よう、あんた平気か?怪我してない?」

突然背後から声が聞こえてきたことに驚き、思わず武器を手にして身構えると、その人物も反射的になのか持っていた武器の先を廩饂に向けた。見たことのない型の武器だ。

「……あ、悪い」

相手は暫くしてすぐに武器を下ろして、太股に巻き付けられている入れ物らしき物にその武器を仕舞った。

「あんたもそんな物騒なもの下ろせよ。こっちはあんたとやり合うつもりはないんだから」

その様子を見た廩饂は、武器は下ろしたものの警戒は解こうとはしなかった。男は鬼獣の骸に目を向けると眉間にしわを寄せた。

「この国にはこんな怪物がいるのか?」

男が長細い筒のようなものを肩に担いだ時にガシャンと鈍い音がした。

「まあな」

「なんだ、随分曖昧な言い方じゃないか」

「この化け物が現れ始めたのはほんの数年前のことだ。詳しいことは知らん」

そこで廩饂は探るように男を見た。所々跳ねた、癖のある髪の色は金、肌の色は白く、青く澄んだ瞳がよく栄えて見えた。そして何やら服装も風変わりでこちらの文化とは異なっているようであった。そして男は、心中を読み取ったかのように言うのだ。

「そういうこと、俺は外の国から来たんだ。ルルスって国なんだけど…って、此処で長話するのも危ない気がするし、詳しい話は此処を出てからするよ」

廩饂もそれに同意してひとまずこの場所から離れることにした。帰りは行きで残してきた目印を辿って慎重に進んだ。女子と出会った場所を通りすぎた時、「あの娘は無事にここから出られただろうか」とふと思った。今思えばやけに軽装であったし、この複雑な森を探索しに来たのであればいささか心もとなかった。

森を抜け、視界が急に明るくなったので思わず目を細めた。まとわりついていた禍々しい空気が離れ、心なしか体が軽くなったような気がした。廩饂は男に向き直ると先程の礼を言った。

「別に礼なんていい。さっきの化け物は明らかにヤバそうだったからな。さすがに俺の国にもあんなでかいのはいなかったなあ」

「貴殿の国にもあのような獣がおるのか?」

「まあな。時間があればもっぱらこいつで撃ってたし、狩りなら得意だぜ」

そう笑顔で言って先程の筒状の鈍器を肩に担ぎ、胸を張った。廩饂は不思議そうな顔をして鈍器をまじまじと見た。この男は撃つと言ったが、一体何がどこから出るというのだろう?すると男はそんな様子を察したのか鈍器を目の前に差し出した。




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