完成品は狂い出す(神童)

2011/11/05


崩壊の兆しを、俺は知らない。俺が知った時には既に壊れていた。

三国先輩は壊れる瞬間を知っている。悲鳴をあげて崩れさる夢の姿に呆然として、愕然としたと言っていた。
弱小から一気に名門に上り詰めたから、崩れるのは早かった。恐らくどこの学校よりも、侵食しやすかったのだろう。
栄光と名誉を求めた人は、きっと多かったから。
憧れが堕落していったのを、みんなどんな想いで見つめていたのだろう。

俺は知らない。

だから、絶望は隣にいた。いつだって、すぐそばで俺が現実を思い知って諦めるのを待っていた。笑うでもなく、引き寄せるでもなく、ただ待っていたのだ。
行き着く先を知っていたから、ただ待つだけで良かった。待つだけで俺は現実に膝を折る。絶望の前に跪く。そう決まっていた。

だから、お願いだ。そんなふうに夢を語らないでくれ。

「サッカーが泣いてます!」
「サッカーを生き物のように言うのは止めろ!」

一度完成したらあとは崩れるしかないんだ。壊れて、ぐしゃぐしゃになって、誰からも見捨てられて、地に落ちて。
この場所はもうダメなんだ。俺も、先輩も世界も、何もかも狂ってるんだよ。正常なんかどこにもない。正常が異常なんだ。
だからお前は異常なんだよ。諦めたんだ、振り向かせないでくれ。これ以上惨めな気持ちになるのはごめんだ。もう嫌なんだ。絶望ばかり見つめて泣くのは。

希望は、俺には重たすぎる。



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引き続き、空を飛ぶ5つの方法さんからタイトルお借りしています。

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