英雄という幻想(剣城兄弟+豪)

2011/10/19


「京介……その人は」

呆然と口を動かしながら、優一は弟と並ぶ少年を見つめた。自分の知る姿よりもいくらか幼いが、あの特徴的な髪色も、意志の強さを表すような吊り上がった瞳も、憧れのあの人にそっくりだ。というより、あの人そのままである。
京介は嬉しそうに頬を紅潮させながら、その少年の腕を掴んだまま言った。

「豪炎寺さんだよ、兄さん!」

まさしく爆弾である。少年に目を向けると、穏やかに笑いながら頷いた。本当に、あの人なのか。

「豪炎寺さんも雷門に入ったんだ!」
「それも今日、な」

こんなにニコニコと笑う京介はいつ以来だろう。二人がボールを追いかけていた幼い頃に戻ったように無邪気ですらある。優一は自由に動かない足を引きずるようにベッド上で身体を動かして、二人と向き合った。

「初めまして、豪炎寺さん。京介の兄の優一です」
「ああ、初めまして。自己紹介の必要はないと思うけど、豪炎寺修也だ」
「本物なんですね」
「偽者がいたら大変だな」

差し出された手を握りながら豪炎寺は笑う。温かい。本当にここにいるのだ、少年の頃のあの人が。

「豪炎寺さんに会えるなんて、夢みたいです」
「なあ、敬語じゃなくて普通に話さないか?剣城の一つ上なら俺と同い年だろう」

それに俺はそんなすごい奴じゃない、豪炎寺は言うが、十年前に世界の頂上に立った彼がすごくなくて誰がすごいと言うのやら。優一も京介も、豪炎寺に憧れた先に今の姿があるのだ。他にも多くの者がその背中を追い駆け、同じ場に立つことを夢見てサッカーを始めたことだろう。
豪炎寺は二人の、いや、サッカーをする少年たちにとってのヒーローなのだ。
優一は首を振る。

「そんな、俺なんかが呼び捨てなんて」
「なら友達になろう。友達は敬語を使わないだろう」

少し腰をかがめて豪炎寺が優一の顔を覗き込む。優勝トロフィーを抱える少年たちのほんのわずかばかり古ぼけた写真、中心に近い場所で笑っていたときよりもずっと優しい顔をして。
京介を見る。まだほんのりと赤い頬で二人を見つめている。

「…いい、んですか」
「友達になるのに、何か条件が必要なのか?」

そう言った豪炎寺の姿は、優一と変わらないただの少年だった。



―――
本編すげえな!
ということで現実逃避をかねて1010の続きを。優一兄さんと豪炎寺さんは同じ兄という立場で仲良くなればいいよ。京介は豪炎寺さんに可愛がられればいい。

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