前進全力(捨+豪)

2011/10/04


飛び上がり回転しながら足をクロスさせる。ぐっと力をこめ、ボールに向かって強く振り下ろす。

「X…ブラストォ!」

赤く尾を引きながらゴールに襲い掛かるシュートを、マントを翻す魔神が突き出した手で押さえ込む。じりじりと円堂の足が後ろにずれるが、力比べは円堂に軍配が上がった。大きな手を包むグローブに挟まれボールは沈黙する。

「……ちっ…」
「いいぞ、捨札!よし次!」

よろけるようにフィールドの外に出た捨札の頭にタオルが投げられる。

「大丈夫か」
「……ああ、別に」

ドリンクボトルを手に豪炎寺が近付く。ベンチまで歩くのが億劫になったのか、捨札はその場に胡坐をかいた。汗が目に入る前にタオルで乱雑に拭う。肩までかかる煉瓦色の髪が額に一筋はりつく。
フィールドでは吠え猛る狼が飛び掛かる準備をしている。シュート練習の最中だが、豪炎寺の出番はとうに終わっている。

「力を込めすぎなんじゃないか」
「手を抜いていたら練習にならないだろ」
「倒れる寸前まではやりすぎだな」

差し出されたボトルを逆さまにして、浴びるように水分を摂取する。頭から被らないのは中身が水ではないからだけの理由である。一気に半分以上を胃に流し込み、捨札は大きく息をついた。

「……俺はお前と違ってそこそこだから、全力じゃないと話にならないんだよ」
「Xブラストは強力じゃないか。それこそ爆熱スクリューよりも」
「一発しか打てなきゃ問題外だ。でも二発打てるように力を残したら止められる。全力しかないんだ、俺には」

タオルで口元の汗を押さえる捨札のつり上がった双眸は、真っ直ぐにゴールを見つめている。豪炎寺はその隣にしゃがみこんだ。

「…少しは余力残しておけよ」
「だから」
「グランドファイアは一人じゃ打てないんだ。捨札がいないと困る」
「……そうか」

ああ、と豪炎寺が頷く。二人の視線はフィールドに固定されたままだ。

「……努力する」
「頼んだ。それよりも体力つけたほうがいいんじゃないか?」
「そんなすぐつかねぇよ」
「もっと食べたらどうだ。お前細いし」
「無茶言うな」

二人の会話する様子を山札が見ていたのは本人たち以外の知るところである。

「良かったな、終…」
「山札ー、次お前の番だからー」



―――
捨札の『ちょうわざ!』の話がしたかったんだけども、なんか脱線した感満載。
捨札の口調すごく悩むね!もっと悪い感じでもいいのかなー。でも好き。



拍手ありがとうございます。返信不要でコメントくださった方、ニャッキさんありがとうございました!嬉しかったです!

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