スローテンポでいこう(リクエスト不豪)

2011/06/14

※高校生です。



「よぉ」

校門に立っていたのは見慣れた人物だった。ここしばらくは会ってなかったが。
ああ、とだけ返して門を通過する。寄りかかっていた不動も豪炎寺について歩き始めた。

「ガラの悪いヤツってお前のことか」
「ンだよ、それ」
「校門で不良待ちしているヤツがいるって噂になってたぞ」
「ふーん」

興味ないと言外に告げて不動は少しだけ歩調を速めた。豪炎寺を半歩だけ追い越すと伸びをする。前を留めていない制服が風にはためいた。

「で、何の用だ」

ネクタイに人差し指をかけ少し緩める。不動ほどではないが豪炎寺もあまりきっちりとするほうではない。ボタン二つ開いたワイシャツの首にシルバーのチェーンが見える。
引っ張ってやりたい衝動に駆られたが、公道でふざけるのはさすがに良心が咎める。不動は首を少し曲げて豪炎寺を見る。

「べっつにぃー。メールの返事もくれねー薄情者の顔を見に来ただけだよ。生きてんだか死んでんだかわかりゃしねぇ」
「…ああ、悪かった」
「思ってねぇだろ。練習試合で会えりゃ十分ってか?」
「よく分かったな」

返事を聞くなり不動が豪炎寺にヘッドロックをかけた。少しだけ身長の高い豪炎寺は勢いに負けてよろめく。

「わ」
「反省しやがれ」

不動はにやりと笑って豪炎寺の額を指で弾く。

「痛いぞ」
「当たり前だ痛くしてんだから」

二人の間に遠慮という言葉は存在しない。適度な距離を保ちながら友人というには近すぎる関係を続けているうちに、一線を越えてしまったからだ。
今の関係にあえて名前をつけるなら、やはり『恋人』が正しいのだろうか。
二人とも言葉に出して確認したことはない。恐ろしいからというわけではなく、なんとなく機会を逃してしまい、そのままずるずると続けているからである。

「おごれよ」
「セット一つ」
「二つに決まってんだろ」
「セット一つとナゲット」
「仕方ねぇな、それで手を打ってやるよ」

不動が手を離す。ようやく解放されて深く息をすると豪炎寺は無防備な脇腹に向かって肘を突き出した。

「いってぇ!」
「お返しだ」
「てンめ…!」

今はそれでいい。この生ぬるい日常を壊すのはもっと先でいい。それまではバカをやりながら笑いあうことにしよう。
ファーストフード店に向かいながら二人は軽口をぶつけあった。



―――
大変お待たせしました!出水さまの十五万キリ番リクエストの『高校生不豪』です。
なんだか仲のいい友人二人みたいなことになってしまいましたが、この二人はべたべたする関係よりはもうちょっとドライに、でもトクベツな関係とイメージだったので、そんな風にしてみました。
高校生という設定が全く生かせてませんが豪炎寺は高校ではブレザーだと思ってます。不動はブレザーでも学ランでも。
ご期待に沿える出来になったかは分かりませんが楽しかったです。
リクエストありがとうございました!

戻る




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -