♯どれにしようか(立豪小ネタ)
2011/04/22
うんうん唸りながら秘伝書を睨み付ける立向居の手元をひょいと肩越しに覗きこんで、豪炎寺は声をかけた。
「何か覚えるのか?」
「あ、豪炎寺さん!」
慌てる様子の立向居に笑いかけて隣に腰掛ける。この年下のゴールキーパーは豪炎寺に対してひどく緊張するところがある。立向居がもともと気弱な部分を持っていたのもあるが、二人が恋仲だということも少なからず影響していると見て間違いではないだろう。
豪炎寺を横目で窺いながら、立向居は秘伝書をまとめていた紐をいじる。
「ほら、俺の技枠まだ二つ空いてるじゃないですか」
「そうだな」
「だからキーパー技を増やして強化しようかなと思いまして」
「そうか。偉いな」
ちなみに豪炎寺の枠はヒートタックルとセツヤク!で埋まっている。つくづく攻撃力の高い少年である。
えへへと照れくさそうに笑う立向居を優しい瞳で見つめていた豪炎寺だったが、ふと秘伝書を見て不思議そうな顔をした。そこにある名前はセーフティプロテクトやオーロラカーテンなど、あまり強力とは言い難いものばかりだったからである。
「これでいいのか?」
「こういうのがいいんです。ムゲン・ザ・ハンドを覚えて多人数相手が、マオウ・ザ・ハンドで強力な人の相手が出来るようになりましたけど、豪炎寺さんを守る壁が欲しいので」
「立向居……!」
完璧に用途としては間違っているのだが、立向居の気持ちに感激している豪炎寺にとってそんなものは些細なことである。
マメのある固くて大きな手に触れてじっと見つめ合う。ここが日本代表の合宿所だということはお構い無しらしい。周囲に人が居ようと二人の世界である。
「なぁ、あいつらどうにかなんねーの」
「無理っスね」
「こんなところでイチャこくなよなーうっとうしい」
「それはわかるっスけど」
「立向居のやつ緩んだ顔しちゃってさ」
「……もしかして羨ましいっスか?」
「んなわけないだろバーカ!」
木暮と壁山の会話も知らんぷり。久遠が練習再開を告げるまで、立向居と豪炎寺は二人の世界を堪能するのだった。
―――
ゲーム設定だとこういうことですよね。立向居の技欄はまだ埋めてないですけど。
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