雨垂れの朝(風豪)

2011/04/17

 
拍手更新しましたー。今回は綱豪です。



しとしとと降りしきる雨が傘を打つ。二つ並ぶ傘がぶつかるたびに、ぱらぱらと雫が流れ落ちた。

「寒いなー」
「雨だからな」

雨だから部活はない。にも関わらず、風丸と豪炎寺は早朝の通学路を歩いていた。朝の練習に合わせての早起きは既に習慣になっていたので、朝から雨が降っていようと家でゆっくりとするということができなかったのだ。
沈黙を破るのは、二人の間では風丸の役目だった。豪炎寺はもっぱら相槌を打つばかり。

「息が白いぜ」
「本当だ」

はあ、とわざわざ大きく息を吐き出して、豪炎寺は小さく笑った。
寒さで赤くなった鼻と頬が、切れ長の印象の豪炎寺を子供らしく見せている。ともすれば年上に見えることもある豪炎寺が同い年だということを、風丸はこんなときに実感する。
意外と子供らしい面は多々あるのだ。
しかし、重ねてきた経験がそうさせるのか、それとも元々の性質かは知らないが、豪炎寺はどこか離れたところから豪炎寺自身も含めた世界を眺めているような気がしてならない。

「……なあ、手を繋がないか」
「今か?」
「以外にいつ繋ぐんだ」

風丸の言葉に豪炎寺は黙り込んだ。風丸も更に言葉を重ねるつもりはなく、静かに答えを待った。
傘を打つ雨の音とスニーカーが水を踏む音だけが満ちている。水の中に沈んでしまったかのような錯覚。
ぱたり。ぴちゃん。音は止まない。
学校までの距離はあと少しというところまで縮まっていた。時間切れかと風丸は落胆した。
その時。

「……いいぞ」

囁くように豪炎寺は言った。傘が大きくぶつかる。
冷えた指先が触れ合って、おずおずと、しかししっかりと繋がれた。

「寒いな」
「そうだな」

学校まではあと1分もかからないだろう。繋いでいられる時間はそれよりももっと短い。二人の歩調が、少し、遅くなった。



―――
前回の拍手お礼でした。

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