ぽつぽつぽすん(円豪)

2011/03/26

 
あいにくの雨にグラウンドはぬかるんでひどい有様、おまけに修練場は改修中とくれば、さすがの円堂も元気をなくす。自分の部屋のベッドに力なく倒れ込んでうーうー唸っている。
様子を見に来た豪炎寺は、予想通りの姿に苦笑を漏らした。

「身体を休めることも必要だって前に言われただろう」
「でもさー、じっとしてられないんだよー!豪炎寺はそうじゃないのか?」
「俺は別に。無理して風邪引くのも御免だしな」

あっさりと返ってきた言葉に円堂はますますふてくされる。
円堂だって理解はしている。休養が必要なことも、こんな状況じゃ練習は出来ないことも。
しかし、サッカーも特訓も既に生活の一部なのだ。それは言うなればご飯のような位置付けで、落ち着かなくて収まりが悪いどころの話ではなく、足りなくて困るレベルなのである。
元気がなくなるのも道理に適ったことなのだ。
豪炎寺は円堂の頭の近くに腰掛けた。

「……やっぱり似てる」

小さく呟いて優しい仕草で円堂の頭を撫でる。見上げれば豪炎寺はさっきとは違う笑みを浮かべていた。

「何に?」
「昔飼っていた犬。円堂を見ていると思い出す」
「どんな犬だったんだ?」

初めて聞く話に円堂も食い付いた。つまらないから時間潰しになるかもしれないという期待も、ほんの少し入っているが。
豪炎寺はぽつりぽつりと語りだす。

「小さいころのことだ。母さんがまだ生きていて、サッカーを始めてからそんなに経ってなかったかもしれない。茶色の犬を飼ってた」
「それが俺に似てるって犬?」
「散歩が大好きで、雨だろうと出かけたがったところなんかそっくりだ」

くっくっと豪炎寺が笑うのを見て円堂はバツが悪そうな顔をする。

「元気で、なかなかおとなしくしてくれなかった。窓の外を見ても理解しなくて、リードを持ってきて玄関で待ってるんだ。ボールを抱えて窓の外を見ているお前と同じだな」
「…そこまでバカじゃねーって」
「どうだろう」

茶化す語調に円堂がむくれる。豪炎寺はぽんぽんと軽く頭を叩く。子供をあやすような手つきに、円堂は更にむっとする。

「冗談だ。それから、抱っこしてソファに行って、寝つくまで撫でてやるんだ」
「ふうん」
「円堂はどうする?」
「え、俺?」

唐突な質問に質問で返すと、豪炎寺はいたずらっぽく笑う。

「撫でててやろうか、それともいらないか」

円堂が一瞬真面目な顔をする。どきりとした次の瞬間、腕を引かれて視界が横になる。逆さまに映る円堂がにっと笑う。

「お前も一緒に寝ようぜ!」

わかった、と豪炎寺も笑って返す。窓を打つ雨音が遠ざかる。ぬくもりに目を閉じれば、夢の世界はすぐそこにあった。






―――
またまた暁ニャッキさんとの合作です!円豪可愛いよ円豪。

戻る




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -