少年よ、大志を抱け(虎→豪)

2011/03/24


青いユニフォームを着て、世界という舞台に立つ。そんなこと、誰が予想するもんか。
だって俺はまだ小学生で、どっちかといえば上手いほうだけど井の中の蛙って言葉が相応しいような、閉じた世界でサッカーをやってきたんだから。
わーわーと観客席で歓声があがる。眩しいほど晴れた空の下、俺は日本のサッカー少年たちの期待と羨望と嫉妬を背負ってここに立っている。ありとあらゆる人種が揃った観客席だけど、共通点が一つ。みんなサッカーが大好きなんだ。そう思うだけで俺の胸は高鳴る。
母さん、見てる?俺、有名人になっちゃったよ。帰ったらとらのやも忙しくなるかもね。なーんて。

「どうした、虎丸」

ちょっとだけ笑ってるみたいな声。豪炎寺さんも楽しそうだ。俺はとびっきりの笑顔を返す。だって、こんなに嬉しくて楽しくて、笑わないなんて無理だ。

「本当に世界なんですね!」
「夢だと思ったか?」
「いいえ。でも、夢みたいに幸せです!」

豪炎寺さんは今度こそ微笑んだ。
年齢の壁が邪魔をして、本来なら俺は豪炎寺さんの隣に立てるわけがなかった。
でも、この大会の間だけ、俺は豪炎寺さんと同じチームで練習して試合に出る。豪炎寺さんのことを間近で見て、会話だってできる。これが幸せじゃなくてなんだっていうんだろう。
世界と戦うのもそりゃあわくわくするけど、俺はやっぱり憧れの豪炎寺さんのほうが優先順位が高い。言ったら怒られそうだから言わないけど。
遠くを見る豪炎寺さんの横顔はテレビの向こうにいた憧れの人そのままの姿で、やっぱり俺は豪炎寺さんが好きだって思う。

「夢で終わらせる気なんかない。一番になりに行くぞ」
「はい!」
「着いてこれるか?」
「俺、まだ本気出してないって言いましたよ?」

そう言って笑えば、豪炎寺さんは上等だ、と呟いた。二歳の差がなんだ。俺はここに立っているんだから、もう不可能なんかない。欲しいものは取りに行かなきゃ手に入らないって、分かったから。

「覚悟してくださいね」



―――
白だか黒だか分からん虎丸。どっちかといえば白?
虎丸と豪炎寺って美味しいと思うんだけど自分では書きにくい。でも虎丸の一人称は楽だわー。

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