きみのて(立豪)

2011/03/10

 
豪炎寺のものよりも一回り近く違う大きな手を、そっと撫でる。幾つものまめができては潰れた手のひらは、ごつごつとして固い。
傍らに置いたハンドクリームを少し指ですくい、荒れた手の甲に塗りつける。
子供らしい丸さはどこにも見当たらず、まるで手だけが先に成長してしまったように見える。骨をなぞると、くすぐったいのか、立向居は肩を揺らした。

「ご、豪炎寺さん」
「自分でやる、か?」

言おうとしていた言葉を先に取られ、開いていた口をゆっくり閉じる。立向居のそんな姿が面白かったのか、豪炎寺はくすくすと笑った。
甲から手のひらを優しい動きで撫で、ハンドクリームをすりこむ。指先へと手を滑らせ、繋ぐときのように指を組む。指の間もしっかりと塗りこむために。
熱心に手を見つめられ、立向居は恥ずかしそうに顔を背けた。

「……この手が」
「はい?」
「立向居のこの手が、俺の背中を守っているんだな」

丁寧なケアで少しは潤いを取り戻した立向居の手は、はじめと違ってかさつく感触は薄れていた。それでもまめの潰れた痕だけは、ゆっくり撫でる豪炎寺の指に存在を主張する。
しみじみと呟かれた言葉を噛み締めて、立向居は目を見開いた。
守っている。豪炎寺は今確かにそう言った。認められた。背中を預けていいと、立向居を認めてくれたのだ。
豪炎寺は相変わらず立向居の手を撫でている。何が面白いのかも分からないが、その表情は穏やかな笑いを含んでいる。

「すごいな」

純粋な感嘆をこめた呟きがくすぐったい。胸の奥の柔らかな場所を、豪炎寺の手が撫でているみたいだ。

「あなたの背中を守りたくて、頑張ったんです」

立向居は笑った。フィールドのほぼ対極にいて、敵陣に真っ先に切り込むひとが後ろを振り向かずに済むように。それがゴールの前に立つ者の役目だ。
まだまだ未熟だけれど、その背中が遠くに行けるようにと踏ん張ってきた。少しでも背中を押すことが出来たなら。
豪炎寺は一瞬きょとん、としたけれど、すぐに笑って立向居の額に自分の額をくっつける。

「ありがとう、立向居」
「もっと頑張りますから、俺」

豪炎寺の手をたやすく包み込んでしまう手は、温かかった。



―――
ピクシブからの移動ラスト!
立向居可愛いって気持ちが最近ぶわっときました。とりあえずゲームの立向居を最強のゴールキーパーに育ててくる。

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