スターゲイザー(ヒロ豪)

2011/03/09

 
「豪炎寺くん、知ってるかい?」
「何がだ」

ライオコット島の空は広い。
各地を再現した建物が並ぶ島内にビルはなく、一番大きな建物はおそらくスタジアムになるだろう。日本の都会のように建物が邪魔をしないから、広く感じるのかもしれないが。
ジャパンエリアに流れる川にかかる橋の上に並んで、豪炎寺は基山と夜空を眺めている。
基山に誘われて外に出たが、南の島とはいえ夜は少し冷える。ジャージを着てきて良かった。基山はなんでもない顔をしている。
富士の麓は、寒かったから。

「あの星と俺たちの間の距離は果てしなく遠いんだよ」
「キロメートルでは表せない数字だとは聞いたことがある」
「その通り。光って一秒で地球の周りを七周半出来るんだけど、その光ですら何年も、いや、何万年もかかるんだ。すごいよね」

基山が笑う。いつもよりも柔らかな顔をしている。

「すごく遠いな」
「それもあるけど、俺たちの知らない場所がどこまでも広がっていて、しかもそれがどんなところか誰も知らないんだ。面白いと思わない?」
「でもそれって寂しくないか」
「どこが寂しいと豪炎寺くんは思うの?」

基山の瞳の色が森の色になる。夜の森、深い深い緑色。吸い込まれそうな色をしている。
基山にはこの世界はどんなふうに見えているのだろう。自分の見ているものとは違うのだろうか。
豪炎寺は考える。
そして、答える。

「なんだか、取り残されているみたいで」
「うん」
「自分が一人、浮いているみたいな気持ちになりそうだ」
「たぶん、そこが違うんだろうね。俺は一人ぼっちだけど、遠いけれど、誰かがそこにいてそこにいることを表現してくれているって思ってた」

豪炎寺は基山の瞳を見つめたままだ。白い瞼が一旦視線を遮断する。もう一度開かれたときには、緑は明るさを取り戻していた。

「どんなに遠くても、そこにいるんだよ。俺も、豪炎寺くんも」
「そこに」
「そう。そこに、そしてここに。だからこうして手も繋げる」

基山の手が豪炎寺の手を包む。どちらの指先も冷えていて、微かに身震いした。

「俺たちはここにいるよ」

もう一度空を見上げる。なんだか星が降ってきそうだと豪炎寺は思った。



―――
ピクシブからです。
ボンゴレーノ麹さんと交換こしたヒロ豪なのです。

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