♯無意識小悪魔(フリリク不豪)
2010/11/29
日本よりもずっと南方にあるライオコット島の気温は高い。沖縄で暑さに慣れているはずの綱海たちですら、最初は疲れがひどかったぐらいだ。
最近はそんなこともなくなったが、暑いことは変わらない。練習を少し多めにしただけで汗でシャツの色が変わるほどである。
そんな中、今日も今日とてイナズマジャパンは練習に勤しんでいた。
「豪炎寺、こい!」
「行くぞ円堂!爆熱…ストーム!」
炎が巻き上がる。豪炎寺のしなやかな身体が空中で踊る。強靭な左足がボールを捉え、ゴールに向かって思い切り蹴りつける。唸り声を上げて襲い掛かるボールを円堂もマジンを出して迎え撃つ。
たかが練習。されど練習。イナズマジャパンの中では練習は試合とほぼ同義語だった。
「暑い中よくやるよ……」
不動は呆れ顔で呟く。以前よりもずっと馴染んだものの、熱血青春スポ根を地で行く円堂のノリにはついていけないのか、離れたところで見ていることがたびたびあった。
基山が誘いに来たこともあったが、彼は空気を読むタイプなのかしつこく誘うことは無かった。適度な距離を見極めているのだろう。自分と似た匂いを感じ取って、不動はあまり基山のことを好きになれなかった。
「次、染岡!」
「おう!」
シュート練習とキーパー練習は同時に行われ、ローテーションでフォワードがシュートしていく。連続で必殺技を繰り返した豪炎寺は休憩に入ったようだった。
「あつ……」
ベンチの前でドリンクを飲んだ豪炎寺が呟く。不動はふらりと近寄った。
「よくもまあこんなピーカンの中で炎なんか出せるよな」
「本気でやらなければ練習にならないだろ」
「へいへい」
豪炎寺はぐいとドリンクをあおる。零れた雫が喉や腕を伝う。
自分と同じくまだ喉仏の目立たない喉が嚥下するために動く。汗などの雫が光を浴びて光っている。不動はどきりとした。
豪炎寺の姿はどこまでも禁欲的だ。清潔感に溢れていて汚いこともいやらしいことも知らないように見える。何度も繋がっても、豪炎寺が汚れたとは不動には思えなかった。
「暑いな……」
呟くと、豪炎寺はおもむろにユニフォームを脱ぎ捨てた。肉の薄い引き締まった身体が日光の元に晒される。
不動は瞠目する。
「なっ……!」
「木野、替えはまだ洗濯中か?」
「ううん。干してあるよ。見てくるね」
「頼む」
ぱたぱたと駆けていく木野を見送っていた豪炎寺は、痛いほどの視線を感じて振り返った。
「不動?」
「な、なんで脱ぐんだよ!」
「なんでって、汗で気持ち悪かったし暑かったから」
おかしくないだろう?豪炎寺は首を僅かに傾ける。
ほとんど薄くなって目立たなくなってはいるが、不動の付けた痕が伸びた首筋とハーフパンツぎりぎりの腰に見える。虫刺されと言い張れば支障はなさそうだが、今の今まで考えていたこととあいまって不動にはひどくいやらしく見える。
綺麗な豪炎寺と、その赤みがミスマッチだ。不動の顔に熱が集まる。
「どうした、顔が赤いぞ。熱中症か?」
豪炎寺が心配そうに覗き込んでくる。お前のせいだと言えたらどんなに楽か。
とりあえず、今晩は絶対にイジメてやると心に誓った不動だった。
―――
リクエストの『無自覚誘い受けの豪炎寺とそれに悶々とする不動で不豪』でした。不動ちゃんが意外に純情ボーイして楽しかったです。
リクエストありがとうございました!
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