かたちにしてみようよ(年齢操作円豪)

2010/11/27

 
「ずっと一緒にいられたらなあ」

円堂はぽつりと呟いた。
二人の休みが久しぶりに重なった。出かけようという話もなく、家でゆっくりしている。こんなときでもなければ二人きりでいられないからだ。
豪炎寺は書類から顔を上げる。円堂はテレビを見ていた。画面は野球選手の結婚の話題で持ちきりだ。

「結婚かあ」
「海外にでも行くか?きっと大ニュースになるだろうけどな」
「うーん……」

円堂は腕を組んで唸る。くすりと笑うと、豪炎寺はまた書類に目を落とす。英字の論文を読み解くのはずいぶんな作業だ。早く仕事を終わらせてしまおう。

「うーん」
「まだ悩むのか?」
「いや、そうじゃなくて、なーんかいいこと思い付いてたはずなんだけど」
「いいこと?」

あと数ページ。終わったらコーヒーを淹れて、円堂の話をゆっくり聞こう。
豪炎寺のペンを持つ手が忙しく動く。ゆらゆらと円堂の頭が左右に揺れる。昔と変わらない、考えこむときのくせだ。
円堂の唸り声をBGMに、豪炎寺は黙々と読み進める。あと2ページ。軽く息をついた。そのとき。

「あ!」

突然の大声に豪炎寺の肩が跳ねる。円堂の声はよく響く。中学のときでさえピッチの端から逆の端まで届いたくらいだ、肺活量が上がった今なら騒音とカウントされる数値が出るに違いない。

「ど、どうした、円堂」
「思い出したんだよ!ちょっと待ってろ!」

バタバタと円堂は自室に駆けていく。後で両隣と下の部屋に謝りに行かなくては。豪炎寺は溜息をついた。がさがさと部屋を漁る音と、あれーという円堂の声。騒がしさは昔のままだ。
豪炎寺はまた目を戻す。もう少し。

「あった!」

円堂の声。最後の一文を読んで、ペンを置く。

「あったあった!」
「何が?」

喜色満面といったふうの円堂が、豪炎寺の目の前に一枚の紙を突き付ける。

「婚姻届け?」
「そう!こないだ後輩が貰いに行くのに付き合って、ついでに貰ってきたんだ」
「……それで?」
「書こうぜ!」

円堂の言葉に豪炎寺は瞬きを繰り返す。

「……うん?」
「だーかーらー、婚姻届け書こうぜ」
「円堂、ここは日本だ」
「知ってる」
「日本の法律じゃ男同士は結婚できないんだが」

豪炎寺の言葉に円堂はきょとんとする。豪炎寺も同じ顔をしている。

「うん、でも書いちゃダメってわけじゃないだろ?」
「まあ、そうだが」
「じゃあ書こうぜ」

な?と円堂が笑う。押し切る形でペンを持たされ、豪炎寺はしぶしぶ書類に自分の名を書いた。それなりに整った字の隣に大胆な、というより豪快すぎる字が並ぶ。

「印鑑もな」
「そこまでやるのか?」
「だって婚姻届けだぜ」

手渡された印鑑を所定の位置に押しつける。出来た、と円堂が誇らしげに持ち上げて眺める。ドラマなどでは何度も見たが、実際に見ることになるとは思っていなかった。
豪炎寺は呟く。

「……もし結婚できたら、名字が変わるのか」
「円堂修也かー、不思議な感じだなー」
「豪炎寺守になるかもしれないぞ」
「え、逆だろ。豪炎寺が俺んとこに嫁にきてくんないと」
「一応長男だからな」
「俺だってそうだって」

顔を見合せて、示し合わせたわけでもないのに笑い声が揃う。

「これで、ずっと一緒にいる約束が出来た」
「ああ、そうだな」

自然と寄り添う二人の身体。触れた肩の温かさと一枚の紙を、これからも大切にしようと声に出さずに誓った。



―――
とりあえずこれで終わり!
書きたいうちが書けるもの、だもんね。
実は全部微妙に設定が違ってて、染豪の二人はサッカー選手で同居してる。風豪だと風丸さんは陸上界にいて豪炎寺さんは医者。同居はしてない。円豪は円堂さんはサッカー選手だけど豪炎寺さんは医者。同居してる。
まあ勝手なイメージですが。
さて、明日からはリクエスト消化に戻るぞー!

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