隣の豪炎寺(フリリク不豪)

2010/11/14

 
FFIも佳境を迎え、残す試合はあと二つ。最初は問題だらけかと思われたイナズマジャパンも、今ではすっかりいいチームになった。

その最たるものが不動だ。
馴れ合いを嫌い、どこか他者をバカにしていたあの頃の彼はどこへ行ってしまったのやら。口の悪さも照れ隠し程度の認識をされるまでに、丸くなった。
特に彼が馴染んだのは、豪炎寺の隣というポジションだった。皮肉を軽やかにスルーするようなところが気に入られたらしい。鬼道ほどではないにしろ、理解が早く、打てば響くような反応が返るのも理由の一つだ。

気が付けば、試合のビデオ鑑賞をする際には豪炎寺の隣には必ず不動が座るようになっていた。豪炎寺はあまり中心に寄って見るほうではない。必然的に、豪炎寺の隣に座る機会というのは限られてしまうのである。
その機会をことごとく不動に潰され、虎丸は苛立っていた。生意気盛りの小学生、あのトサカ頭めと悪態をついたこともある。

はじめのうちは野良猫が懐いた程度の認識をしていたメンバーたちも、ようやく事態が悪い方向に進んでいることに気付いた。
不動が障害になって、豪炎寺に近付けないのである。

例えばこんな風に。

「豪炎寺くん、練習しないかい?」
「ダメダメ。こいつは俺と練習すんの。テメェはあのチビとでもやってな」
「豪炎寺、ちょっと相談なんだが」
「女男は黙ってな。豪炎寺は俺のなの」

上は基山、下は風丸。不動の態度は基本的に豪炎寺以外には軟化しない。
この状況を由々しき事態だと考えた鬼道は、打破するための手を打つことにした。とりあえず言語を操る人間同士なのだから、手始めに話し合いからはじめよう。
正直、自分も豪炎寺と話せない状況にストレスが溜まっていた鬼道だったが、頭を使うのは自分の役目だと考えているので、なるべく落ち着いた話し合いになるようにと食堂で話をすることにした。他人の目があると、ヒートアップしにくいこともあるからだ。

「なんの用なワケ?」

不動が不満そうに言う。もちろん豪炎寺の隣に座りながら。この時点でイラッときていた鬼道だったが、どうにか罵倒する言葉を飲み込んでキツくないようにと口を開いた。

「豪炎寺、ちょっと不動から離れてくれ」
「は?」
「ああ、分かった」

豪炎寺が腰を上げると不動がその腕を掴む。

「ちょっと待てよ。いいからここにいろって」
「でも……」
「豪炎寺、頼む」
「いいから」

早くも二人の間に見えない火花が飛び散る。落ち着いた話し合いという鬼道の目標はなんと、たったの三秒で崩れた。

「大体、最近のお前は何だ!豪炎寺にべったりくっついて!」
「はッ、もしかして羨ましいワケ?あーやだねェ男の嫉妬って」
「嫉妬じゃない!周りが迷惑していると言っているんだ!」

笑う不動とは対照的に顔を歪める鬼道のほうが圧倒的に不利かと思われたが、加勢する者がいた。虎丸だ。

「そうですよ!アンタがそばにべったりなせいで俺が豪炎寺さんに近付けないじゃないですか!」
「知るかよ」

面倒そうに不動は言う。しかし、不動はよく知らなかった。豪炎寺修也という少年の人気を。

「そうだそうだ!豪炎寺はお前のじゃねえんだぞ!」
「僕だって豪炎寺くんと練習したいよ」
「え、豪炎寺と練習ぐらいいつだってできるよな?」
「円堂、頼むからお前は黙っててくれ。これ以上事態をややこしくするな……」
「ああもうウルセェなぁ、豪炎寺は俺の!」
「誰がいつハゲのものになったんですか、俺のです」
「お前にもやらねえ!」
「豪炎寺くんはみんなのでしょ」
「そうなのか?」
「だから円堂、頼むから……」





喧々囂々と何人もの怒声と罵声とが飛び交う。不動を取り囲む輪の中からするりと抜け出して事態を眺める豪炎寺に、壁山が話しかけた。

「不動さん怖くないっスか?」
「いや?」

全然、と豪炎寺は言う。

「可愛いじゃないか」

なんか駄々をこねる小さい子みたいで。
静かに落とされた爆弾を、渦中の人は聞いていない。音無はあちゃーといった顔をした。木野は微妙な顔で笑った。冬花は首を傾げた。

「さすが豪炎寺さんっス……」

壁山の一言がやけに重々しく聞こえたのは自分だけではないはずだ。基山は思った。



―――
リクエストいただいた『仲の良い不豪とそれに嫉妬する周囲』でした。
ギャグちっくに書けて楽しかったです。
直斗さま、リクエストありがとうございました!

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