君の拍動、僕の衝動(元拍手お礼)

2010/10/16


拍手お礼を入れ替えました。今回は風豪です。そして下は前回の染豪。



手を繋ぐよりも簡単に、言葉を交わすよりも雄弁に、合わせた背中が感情を伝えてくれる。

染岡の大きな背にもたれ、豪炎寺は安堵していた。
その歳にしては少し大きな方である豪炎寺よりも背の高い染岡は、それに比例するように体格もがっしりしている。
寄り掛かることができる、その事実は豪炎寺の心を軽くした。

常に張り詰めている糸はいつしか、圧力に耐え切れずに身を裂く。
堤防が決壊するように、一瞬あればそれは起きてしまう。
自身が緊張した糸だと豪炎寺は自覚したことはないが、染岡のそばにいると心が和むのは事実だ。

「なあ」

触れ合う背中から振動が伝わる。少し、くすぐったい。
豪炎寺が答えずにいると、染岡はもう一度声をかけた。

「おい」
「なんだ」

更に力を抜いてもたれ掛かる。
染岡の背中が揺れた。

「……重い」
「そうか」

そうか、とは言ったが、豪炎寺は動かない。
染岡は唸ったが、それ以上は何も言わなかった。

とくり、静かにしていると心の臓の音が聞こえた気がした。

その背に掌で触れたいと思ったが、ざらついた自分の手を見て豪炎寺は手を下ろす。

身体の横に落ちた手を見て触れたいと染岡は思ったが、武骨な自分の手を見て、結局拳を握るしか出来なかった。

臆病者だと、笑わば笑え。今しか見えていないのだから。






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