懐に猫(未来パロ小ネタ)

2010/10/05

 
「接触を好むのは淋しがりか甘えん坊なんだと」

ソファに寝転んだまま同居人が口にした言葉に、豪炎寺はつい先日の講義内容を記憶の中からひっくり返して探し出す。

「ああ、児童心理か」
「なんとなく理解できるよな」

腹這いの体勢になった彼が足をぶらぶらと動かす。一応二人掛けのソファなのだが、成人男性が収まるサイズではないのでひじ掛けに上半身が乗り上がっている。豪炎寺は微かに笑った。

「そうかもな。でも淋しがりと甘えん坊って似てないか?」
「いんや、全然似てない」

ひらひらと手を振って彼は言う。

「淋しがりが甘えることはよくあっても、甘えん坊が必ずしも淋しがりってわけじゃないしな」
「なるほど」

豪炎寺は頷いた。以前にボランティアで手伝った保育園にも甘えたがりな子供はいたが、別に友達がいないということもなかった。ただ単にそういう性格なのだろう。そう考えれば、関連性がないと彼が言うのも納得だ。

「で、お前は自分のことどっちだと思う?」

いきなり話が飛んで、豪炎寺は目をしばたかせた。少し考えたあと、小さい声で答える。

「……そのどちらかなら、多分淋しがり、だな」
「ふーん、俺はてっきり甘えん坊のほうだとばかり思ってたぜ」

にやにやと笑って言う彼の視線に耐えきれなくなって、豪炎寺は目を逸らす。
なぜだか分からないけれど彼のそばは心地良くて、つい弱っているところを見せてしまう。普段何も言わないくせに、たまにこうしてからかわれるのが少し気にくわないが。

「そういうときのお前、猫みたい」
「引っ掻いてやろうか」
「おお怖い」

気の置けない友人とは、きっとこういう関係なのだろうな、と思ったが、彼が調子に乗るので豪炎寺は言わないことに決めた。



―――
入学から二年ぐらい経ったかな。
豪炎寺の弱味を見ていいのは本当に心を許した相手だけなんだけど、豪炎寺の過去を知らないからこそ見せられるってこともあるよね。

先月までのを目次に追加しました。もうパソコンじゃないと編集出来ないなー。

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