月曜日は晴れていた(緑+豪+基)

2010/09/20

 

「お日さま園に遊びに来ないか?」

緑川の突然な申し出に、豪炎寺は困惑した顔をする。練習中の話だった。
お日さま園とは緑川たちが育った施設の名前であり、数ヶ月前に日本を騒がせた事件の発端の一部でもあった。渦中にいた豪炎寺はそのことを知っているし、その後のことも知っている。口が重いといったふうに言い淀む。

「遊びにって、あそこは……」
「瞳子姉がいるんだ」

聞き慣れた名に、豪炎寺は一瞬瞠目する。言われてみれば建物自体は壊れたわけでもないから、彼女が住んでいる可能性がないわけではないのだ。彼女の父の所有する施設だったのだから。
しかし、それでも疑問は残る。確かあの施設の子供たちは検査を受けたあと、それぞれ別の施設に移されたと聞いていたのだが。
豪炎寺の疑問を感じ取ったのか、緑川は苦く笑って言う。

「ほら、俺たち顔を知られてただろ?だから新しいところでちょっと、さ」
「……悪い、嫌なことを言わせた」

謝る豪炎寺に手を振って気にするなと緑川は表す。

「瞳子姉が俺たちを迎えに来てくれてさ、今はまたみんなで暮らしてるんだ」
「そうなのか」
「だから、今度遊びに来てくれよ。サッカーしよう」

ああ、と豪炎寺は頷いた。

「円堂たちみんなと行く」

そう言ったのは、世界大会が始まる頃だったかどうだったか。

豪炎寺は今、お日さま園の前にいる。なぜか一人だ。別に理由が分からないわけじゃない。円堂たちは後から来る。先に一人来ただけだ。
いや、誘拐されたというべきか。緑川と基山に両脇からがっしり捕まって、あれよあれよと言う間に連れてこられた。強引すぎる。門柱の向こうを睨み付けて豪炎寺は佇む。

「どうしたの、豪炎寺くん」
「早く入れよー」

赤と黄緑が玄関の前で待っている。考えこんでいても仕方ない。溜息をつくと、豪炎寺は一歩踏み出した。
二人が扉を開いてにこりと笑う。

「いらっしゃい」
「俺たちの家へ」
「……お邪魔します」

玄関で靴を脱ぎ、上がる。施設とは言うが、すごく立派な屋敷のようだと豪炎寺は思った。
シャンデリアや赤絨毯こそないが、品の良い絵が白い壁に飾られ、凝った装飾の電灯が少しオレンジがかった柔らかい光を投げ掛けてくる。あまり見るのも悪いかと気にしつつ辺りに視線をやっていると、豪炎寺の肩を叩く手。

「俺ちょっとみんなに知らせてくるから、好きに歩き回ってて」
「え?」
「じゃあ俺は出かけているやつに連絡しなきゃ」
「は?」
「じゃ!」
「後でね」

言うなり、緑川も基山も軽いフットワークをいかんなく発揮していなくなってしまった。
取り残された豪炎寺は本日二度目の溜息をこぼす。

「……今日はなんなんだ、全く」



―――
どうしても豪炎寺と元エイリアの話が書きたくなったので。明日へ続くよ!

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