幻想に佇む(涼+豪小ネタ)

2010/09/17

 
そこは薄暗く寂しいところだった。誰もいない。何もない。ただ緑が王者として茂るばかり。

「君たちがザ・ジェネシスを破り、私たちを終わらせた」

彼はひどく寒々しかった。薄水色の髪と冴え冴えとした青い瞳が、緑の中にそぐわない。薄い皮膚の下の血管が透けて見えそうなほど白い色をした肌とあいまって、まるで氷で出来た彫像のようだ。
限りなく冷たい世界の、王者のように。

「終わってしまった」
「終わりたくなかったのか」

対峙する少年もまた、色素の薄い髪をしていた。しかし、少年の色は暖かい。柔らかな陽光を一本一本集めて形作ればこんな色になるだろうか。少年は緑の中にあって熱を感じさせる。彼とは正反対だ。

「終わらなければ、夢を見ていられた。いつか父さんが私たちを見てくれると、信じていられた」
「それで幸せなままだった?」

少年が問う。彼は何も答えない。二人は対極にいる。
終わりを告げた少年は、自らもまた終わりを通り過ぎた。
終わりを告げられた彼はまだ終わりの中にいる。
少年は少しだけ彼の仲間に似ていた。いがみ合い競い合い、一緒にいた、赤色。けれど彼は少年を好きになれそうだった。

「いつまでここにいるつもりなんだ」
「私の気が済むまで」
「いつ済む?」
「さあな。私のことだというのに私にも分からない」
「ここは寒い」

彼は薄く笑った。

「私は寒くなどないよ」


―――
涼野と豪炎寺はどうしても静か過ぎる。

目次をちょっといじりました。長すぎたので2ページにわけました。もうちょっと考えてみる。

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