声波数(音村と豪炎寺小ネタ)

2010/09/01


音村楽也には気になっていることがある。世界のさまざまなリズムを知りたいというのはずっと前からの夢だが、それとは違うもっと身近なことで。

この間、沖縄に雷門中がやってきた。行方不明になった仲間の目的情報を頼りにやってきたらしいのだが、その仲間とも無事合流を果たし、ついでにエイリアも倒してめでたしめでたしといった様子だ。本当はその先にまだ強敵が待ち構えているらしいが、せっかくの感動の再会に水を注すのは野暮というものである。
しばらく沖縄で体制を整えてから、次の場所へ向かうらしい。飛び入りとはいえ一時は大海原中の一員だった綱海が波のように去っていってしまうのは少し寂しいが、そういうリズムだったのだ。
それで何が気になっているかといえば、その沖縄にいた仲間の少年のことだ。名前は豪炎寺修也という。炎の男と呼ばれて沖縄でちょっとした不思議現象の原因になっていた少年である。アップビートで攻めあがる試合中と、スローテンポで流れる普段のリズムの緩急の差がいいバランスだと思う。なかなか心地良いリズムだ。
それはさておくとして、この少年、なぜか音村のそばにいることが多い。雷門中のメンバーで練習をしているときなどは当然そばにいないが、自由時間に鬼道と話をしていたりすると、いつの間にか邪魔にならないような場所にいるのだ。
初めは戦略の話に興味があるのかと思っていたが、口を挟んでこないし、時折首を傾げていたりもする。それならばなぜ、と思うのだが、音村にはさっぱり分からない。分からないが気になる。というより、あまりにもそばにいるので居心地が悪い。
とうとう、本人に尋ねてみようと音村は決心した。

「ねえ、俺、君に何かしたかな?」

豪炎寺は驚いたような顔をしたが、ふるふると首を振る。それもそうだろう。正直、全く関わりがない。

「じゃあ、どうして俺のそばにくるんだい」
「……声が」
「声?」
「音村の声が、ある人のものに似ているんだ」

じりじりと日差しが肌を焼く。慣れた暑さだが、豪炎寺には辛いだろうと日陰へと招き寄せて、腰を落ち着ける。

「それで、俺の声がだれに似ているの?」
「それは……」
「ああ、別に名前は言わなくてもいいよ。君にとって、どんな人?」

豪炎寺の表情が微かにやわらぐ。へえ、と音村は顔には出さないものの少し意外そうにした。

「憧れの、人だ」
「ふうん、憧れの人か。どんな人?」
「ちょっとだらしなくて、よく生徒に振り回されていて、頼りなくて、」
「……そう聞くとあまり憧れっぽくないけど」
「でも、尊敬している。もっとたくさん教わりたかった。もっと知りたいことがいっぱいあった」

それきり、豪炎寺は言葉をつぐんだ。木が風に揺られて葉をざわめかせる。海はいつもの青さだし、空も変わらず青い。

「……だからか」
「え?」
「君、俺のそばにいると少しだけリズムが早かったんだ。なるほどね、憧れの人で、トクベツだったんだね」

豪炎寺は何も言わず、微かに頬を染めた。

「いいリズムだ」



―――
いまさら声ネタ。尻切れすぎるだろう。
タイトルはもちろん造語です。

昨日は更新出来なかったのが残念。バイトが夜中だとキツいなー。
あと、ピクシブに小説一本上げてきた。よく分からない綱豪だよ!名前はそのままあきらです。よかったら見てくださいな。


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