汝の隣人を愛せよ(未来パロ)

2010/08/16

※オリジナルキャラがいます。名前はありませんが出張ります。そりゃもうこれでもかというほど。
豪炎寺たちが大学生になったらという話です。単純に言えば小話のヘリクリサムシリーズのことです。
オリジナル要素しかありませんが、それでもよろしい方はレッツスクロール。















楽しいキャンパスライフを夢見て上京してきた俺を待ち構えていたのは、東京という地は恐ろしく家賃が高いという現実だった。
少し奥まったところにいけば途端に安くはなるが、そうなると交通の便が悪くなる。バイトや睡眠時間などを考えながら頑張って妥協しても、家賃という壁は厚く高く立ちはだかるのだった。

そんな時、久しぶりに電話してきた数年来の悪友の言葉に俺は救われるのである。

「ルームシェア?」
『聞いたことないか?二人とか三人で同じとこに住んで家賃を出し合うってヤツ』
「なるほど……いい同居人が捕まえられるかがカギだけど、うまくすれば安くいい所に住めるってわけか」
『つーか、てっきり下宿先見つけたから飛び出してったのかと思ってたんだけど。お前変わらずバカのまんまか』
「サンキュー、助かった!東京来るときは電話くれよ、案内するからさ。じゃあな」
『ちょ、まだ話おわっ』

早速俺は大学の掲示板に張り紙を出した。まだ入学式はしてないが、オリエンテーションで聞いた話によると、大学には大学側の連絡用以外に二つ掲示板が用意されている。それらは生徒間での連絡、たとえばサークルのことなどに使われていて、在籍する生徒なら自由に使っていいとのことだった。
同じことを考える奴はやっぱり少なくないらしく、『同居人募集!』と書かれた紙がひらひらと風に揺れながら点在していた。一通り見ながら条件の合いそうな奴を探してはみたが、残念ながら俺の求めるものと一致するものはなかった。
適当な紙に書いた募集の張り紙を掲示板に押し付けたその晩、早くも電話が鳴ったが、丁重にお断りした。俺だって出来た人間じゃないが、初対面の相手に電話とはいえ遠慮もくそもない奴と一緒に生活をするなんてごめんである。

それから何度か携帯が鳴ったが、これという人間には出会わないまま、不動産に必死に頼み込んで待ってもらえる期限は明日に迫っていた。

「くっそ、通学時間が二時間なんて冗談じゃねえぞ」
「おい、まだ見つかんないのか。お前と同居なんて冗談じゃないぞ」
「俺だってアニキと同居なんざまっぴらゴメンだ」
「勝手に転がり込んでおいていい度胸だな、テメエ」
「え、ちょアニキ待って待って、ドメスティックバイオレンス反対!」

アニキの必殺逆エビ固めが俺に炸裂しそうになったとき、携帯が震えた。

「アニキアニキ!もしかしたらルームシェアの電話かもしんない!」

拘束が一瞬緩んだ隙を見て電話に飛びつく。これが最後のチャンスだ。

「もしもし!」
『っ、も、もしもし。掲示板の同居人募集の張り紙を見たんだが、まだ募集しているだろうか』

勢いがよすぎたせいで電話の向こうで一瞬相手が怯んだのが分かったが、どんな相手だろうとこれを逃すわけにはいかない。思わず握りこぶしを作る。

「ちょうどよかった!明日不動産に話をしに行くんだ。顔合わせと部屋の下見といかないか?」
『構わない、というかこちらこそお願いしたい』
「じゃあ明日の十一時に大学の前でいいか?」
『分かった。俺は豪炎寺だ。明日、よろしく』

電話越しではあったが、それが俺と豪炎寺の初めての出会いだった。

そして顔合わせで、イケメンが立っていると思って若干嫉妬していたらそれが豪炎寺だったのだとは、俺は一生言えないだろう。



気が合わないかと危惧していたのだがとんとん拍子で話は進み、俺は豪炎寺と同居することになった。彼の荷物は驚くほどに少なく、必要最小限とはこのことかと思わずにはいられなかった。
共同のものとしてテレビや冷蔵庫は互いで金を出し合って買うことに決まっていたから、それについては置いておくとしても、ダンボールがたったの三つ。一つは服で、あと二つにさまざまな物が入っていると言っていたが、家具の無い部屋に加えてのその光景はひどく寒々としていた。
まるで、全てを置いてきたかのように。

「クローゼットとかいらねえの?」
「これから買うつもりなんだ。部屋が決まらなかったからどの大きさがいいか決められなくて」
「ふーん。買い物すんなら付き合おうか?人手いるだろ?」
「……いや、いい。気持ちだけ受け取っておく。ありがとう」

豪炎寺と決めた同居のルールはたった一つ。相手が許さない限り、踏み込んでこないこと。
小さく首を振り頬を緩めた豪炎寺を見て、早くもルールが適用されたことを俺は悟った。
前途多難かもしれないちぐはぐなルームシェアが、この日、始まった。



―――
ヘリクリサムシリーズ、別名Aくんのトラブルいっぱいキャンパスライフ序章。
やっちまったぜ!(いい笑顔)
まさかの豪炎寺ほぼ出番なし。名前もないくせに一人称。名前もないくせに兄弟出演。完全なる俺得ワールド。すごく楽しかったです。
続き書きたいー。

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