どんな気持ちなのだろう(二←豪)

2010/07/16

 

許されない恋をした。叶うはずのない恋をした。

生きてきてまだ十年と少ししか経たないけれど、一人のひとを好きになった。

本気だった。真剣だった。正気とは思わない。恋とは狂気の上にしか成り立たないからだ。でなくて、こんな強すぎる感情を抱けるものか。
抱え続けるにはあまりにも激しく、伝えるにはひどく重苦しい、こんな気持ちを。

誰かに話したならそれは幻想だと言ったかもしれない。
または憧憬を勘違いしていると言われるかもしれない。
いっそ汚らわしいと罵られたかもしれない。

男が男を好きになる、など。

けれど、その感情は紛れもない真実であった。
毎日自問自答を繰り返した。
思い込みだと言い聞かせた。
それでも変わることなく、彼の人を思う気持ちは有り続けたからだ。

恋しいと嘆く感情は日増しに強くなっていった。想いに押し潰されてしまうのではないかと考えてしまうほどに。

しかし伝えようとは思わなかった。一人で抱えられないからと重荷を背負わせてしまうような気がしたからだ。

あのひとは優しい。答えがノーだとしても、いいや、ノー以外には有り得ないのだけど、それでも俺を傷つけないように心を痛め、細心の注意をもって答えをくれるだろう。
あの低く優しい声で諭すだろう。
節が目立つ大きな手で肩を抱き、場合によっては頭を撫でてくれるだろう。

優しく、残酷な言葉をくれるのだろう。

結局のところ、俺は傷つくのが怖いのだ。
望む言葉は永遠に貰えないことを知っているから、この想いを拒まれるぐらいなら一人で苦しむほうが良いと思っている。
あのひとに断ち切る役目を託すぐらいなら、知られることなく抱え続けるほうが良いと信じている。

恋は下心、愛は真心とは上手く言ったものだ。一方的に抱く気持ちが相手にとって良いものではないことをずばり言い当てている。

これは恋だ。

そして、あのひとにとって邪魔なもの。

けれど心は捨てられないから、深い底に沈めよう。
重石を乗せて、鍵をかけて、二度と現れないようにしよう。
あのひとが笑ってくれるように。あのひとのそばにいられるように。

だから、最後に少しだけ。好きだという気持ちをほんの一欠けら、声に潜ませることを許してください。



「二階堂修吾さん、……なんて。いいえ、なんでもないです、カントク」





いたひとを、「すき」と言えない人は一体どんな気持ちなのだろう。ほんとうにほんとうに、こころの底から好きだと想えるひとを、「すき」だと言えない人は、一体どれほどの苦しみを飲み込んで生きているのだろう。

(けれど俺はたぶん、その一端を知っている)



―――
豪炎寺さんを片思いさせすぎだろう、自分よ。

題:揺らぎ

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