焼死した人魚(涼+豪小ネタ)

2010/06/18

 

「夾竹桃か」

豪炎寺が持つ枝を見て涼野は呟いた。よくしなる細い枝には肉厚の笹のような葉と、白い花。

「よく分かったな」
「花の形は平凡なほうだが、独特な甘い匂いは分かりやすい」
「そういえばそうだな」

葉を一つちぎると涼野に向ける。豪炎寺の手から受け取り、ゆらゆらと揺らす。茎の部分からは樹液が滲みはじめていた。
花びらをつまみ、ちぎる。甘い匂いが一段と強くなった。二人の髪色のあいだほどの白が地面に落ちる。

「夾竹桃。インド原産の常緑大低木で、桃色の花が咲く。それのように白い花の品種も存在する」
「そして、有毒」

豪炎寺は手に付いた樹液を舐めた。草の青臭さと苦みに眉をひそめる。

「神経毒だったか」
「確か。指先や舌が痺れるんじゃなかったか?」
「最悪なことだ」

涼野は葉を捨てる。既に指先は濡れている。豪炎寺に手を掴まれ、樹液を舐めとられた。生暖かい舌が気持ち悪い。

「わたしが死ぬときは服毒はしない。特に神経毒は」
「なぜ」
「身体が動かなくなるなど死んでも御免だ。そんなことする前に死んでやる」
「矛盾している」

豪炎寺は笑った。飲み下した毒は蓄積されていくだろうか。

「理想の死に方はあるか」
「そうだな、どうせなら一瞬で死ぬのがいいだろう。下手な未練も残さずに済む」
「決まったら教えてくれ。いつかその時に涼野を探せるように」

分かった。涼野は頷いた。豪炎寺が舐めた指先はもう乾いた。花だけを折り取ると、豪炎寺は枝を捨てる。
二人は歩いた。豪炎寺の手の中で白い花は咲いている。桃色の斑点を見つけ、涼野はその花を握り潰したくなった。



―――
夾竹桃が咲いていたので。毒の辺りはもう一度調べよう。
しかし不思議な組み合わせである。

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