狼なんか怖くない(五万フリリク虎→豪)

2010/05/27

 

「好きです、豪炎寺さん!」
「そうか、ありがとう」

このやり取りも、通算三桁を超えた辺りからは全員がスルーするようになった。毎日聞くけれど一日の回数は数えていない。
きっと一度や二度では済まないのだろうことは分かっているけれども。
傍から見て気の毒になるほどに、豪炎寺と虎丸、この二人の関係は一方的だ。尊敬を通り越した思慕を傾ける虎丸の熱烈なラブコールを、意図してか知らないでか受け取り右から左に流す豪炎寺。何も知らない者でも一目で分かる図式だ。
これだけ聞くと気の毒に感じるのは虎丸のほうだが、この肉食小学生を甘く見てはいけない。

「とらやに永久就職しませんか?」
「将来大不況だったら考える」
「大丈夫です、俺がプロの世界でがんがん稼ぐんで!豪炎寺さんは安心して家にいていいですよ」
「その場合、俺がプロにいる可能性はないんだな」
「あ、いやそうじゃなくて、豪炎寺さんと母さんと豪炎寺さんの家族ぐらいの人数なら、俺が食わせていけますよってことです!」
「父さんは医者だから一応それなりに貯えはあるんだが」

万事が万事、この調子である。まだ結婚できる歳ではないのに将来の約束とは微笑ましい、と笑って流せる年齢はとうに過ぎている。
先日などは子作りしましょう豪炎寺さん!と食堂中に響き渡る大声で爆弾が投下され、さすがの豪炎寺もスルーできずに固まった。虎丸は赤面した風丸たちに怒られていたが、おそらく懲りていない。その証拠に舌を出して笑う姿を目撃した者がいる。

「結婚式は教会と神社のどっちにします?豪炎寺さんならどっちも似合うと思うんですけど、やっぱり純白のウエディングドレスがいいかなあ」
「法律上不可能だな」
「じゃあオランダ行きましょうオランダ!あそこ寛大らしいですから」
「旅行ならサッカーが強い国に行きたい」
「じゃあアメリカですね」
「そこは普通ブラジルかイングランドだろう。最近のアメリカは確かに目覚ましいが、世界の実力チームといったらこの二つだ」
「でも結婚できませんよ?」
「サッカー観戦の話だろう?」
「もー、豪炎寺さんは本当にサッカーばっかりなんだから」
「ここで他に何を考えろと」

全くもっともな話である。
しかしその正当な主張は虎丸の前では右から左にスルーされる。ある意味、豪炎寺から学んだことの一つだ。
これが朝から虎丸が帰る夕刻までエンドレスで連日行われれば、たいていの人間なら音を上げるだろう。
たいていの人間は。
残念なことに、豪炎寺は忍耐強さには見てる側が嫌になるほどの定評がある。そんなもん無くていい、とは日本代表と雷門イレブン全員の総意と言ってもいいだろう。そんな忍耐力のため、豪炎寺は虎丸からの熱烈なアタックにへばる様子も見せないのである。逆に他のメンバーが最近うんざりしてきている。
そろそろどうにかすべきだろうと久遠も考えてはいるが、ここで虎丸の志気が下がるのは避けたいところである。
そして結局は鬼道任せになるのだろう。

「豪炎寺さん、愛してます!」
「俺は夕香を愛している」

どっか行ってくれ、誰かが呟いた言葉に二人を残して一斉に頷いたのだった。





お母さんは男は狼なのよ気をつけなさいと言ったけれど、虎の子のほうがずっと怖いとわたしは思うのです





―――
まめさんリクエストの『一方通行すぎる虎→→豪』です。大変お待たせいたしました!ご希望に沿えているといいのですが。まめさんからのご要望に限り、書き直しを受け付けています。そうじゃないんだよ!もっとあるだろ!なんてことがありましたらどうぞお気軽に申し付けください^^
リクエストありがとうございました!



これにて五万hit記念フリリク作品のアップは終了です。消化しきる前に六万も突破していて嬉しい限りです。しばらくはこういった企画はしませんが、通常更新を頑張っていくつもりなのでこれからもよろしくお願いします!



BUMP OF CHICKENのプレゼントを豪炎寺で頭がいっぱいの時に聞いたらぱーんした。


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