謁見(化身大戦パロ)

2012/10/03

男はその切れ長の瞳をわずかに細めた。眩しさでもなく嫌悪でもなく、それはただ思案の色を宿していた。
男の前には使者だという少年がひどく恭しい仕草で跪き、高く頭上に書状を掲げている。

「どうか、お受け取りください」

薄紅の髪を二つに結った美しい顔立ちの少年は、容貌に相応しい声で言った。男の側に控える重臣が一歩踏み出そうとした時、男は薄い唇を開いた。

「その必要はない」

少年が思わず顔を上げ、慌ててもう一度頭を垂れる。重臣が何故と問うように視線を向けると、男は玉座のひじ掛けに身体を預けたまま言葉を繋ぐ。

「私はその会談とやらに行くつもりはない。受け取らなかった、それを返答として持ち帰りたまえ。と言っても、ここまで足を運んでおいて収穫が無いとなれば君も帰りにくいだろう。せめて少し滞在して我が国の現状を知って行くといい」

君たちの上が最も知りたいことだろう。そう、男は笑った。重臣は何も言わず下がった。おそらく手続きのために動いたのだろう。
少年は書状を持つ手は下げたが、面を上げない。当然だ。彼の前にいるのは一国の主であり、少年たちが反旗を翻した相手だ。不敬を働くことがどんな結果を招くか、分からないわけではない。少年はじっと、時が経つのを待っていた。

「聖帝」

低い声が少年の後方から聞こえた。扉が開いた音はしなかったはずだ、と緊張する少年の斜め後方で足音が止まる。途方もない威圧感に、息が詰まりそうだ。

「なんだ」
「手配が全て終了致しました」
「そうか、ではこの小さな使者を案内してくれ」
「承知致しました」

小さなという言葉に含みがあったように思うが、少年はぐっと堪えた。少年の行動が仲間を危険にさらすかもしれない。不用意な発言も行動も、してはならないのだ。
立てと言った声の持ち主は血のように赤い髪をした骸骨のような男で、黒い服も相まって、まるで死神であった。男が仰々しい仕草で恭しく頭を下げる。少年も倣って身体を折った。

「有意義な滞在を」

男の声が降る。どこか楽しげな響きを持ったそれを聞きながら、少年はただただ口を引き結ぶばかりだった。



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ちまちま書いていた化身大戦。陣営は三つに分かれていてそこで戦争。ってだけの本編沿いのようなパラレルもの

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