終わりなき夜の先に(豪炎寺独白)

2012/06/15

円堂は一月前に死んだ。
誰もが口を揃えて言うから、では俺がつい先日会ったのは誰だと問おうとして、銀色の腕輪が目に入った。
突然送りつけられた小包の中にあったこの腕輪と手紙。差出人は名を名乗らず要求ばかりは達者だった。彼―あるいは彼女は俺に何を望んでいるのか。聖帝という傀儡の頃ならば使える権力にも心当たりはあったが、全てを終わらせた今、何が出来るというのだろう。
それでもその腕輪を嵌めたのは、サッカーという言葉を出されたからだった。
全てを投げ打ってでも守ろうとして、ようやく守ることの出来たものが、また奪われる。利用し続けていた少年たちが、今度こそ心から好きになって楽しむことが出来るようになったと思ったのに、また誰かがそれを奪うという。

「そんなこと、させるものか」

円堂の墓前に立つのは、これで二度目だ。最初は彼の祖父が亡くなったときだった。本来のこの時間の俺ならば、三度目なのだろう。
鬼道が振り向いた。俺は首を振る。
そこに彼はいない。彼は今、どの時間軸にもいない。彼の過去だけがこうして存在を主張している。
俺はまた友人を欺くのだ。謀るのだ。嘘を積み重ねるのだ。大丈夫、きっと出来る。同じことを繰り返すだけだ。ほんの少し前の俺に戻るだけのことだ。嘘を罪と思わず欺きを咎と思わず謀りを策と言い換えるだけの、簡単なことだ。

「見ていろ、円堂。お前の時間は巻き戻る」

暗闇を歩くのは、慣れている。



―――
内容が間違っていたことに気が付いて悶えていますわたし何を勘違いしてたんだろう…修正しました。恥ずかしい。

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