圧迫(立豪小ネタ)

2012/04/13

俺を抱きしめる腕は長く、そして力強かった。いつの間にか追い越されていた身長、覆いかぶさるように曲がった背は広くて、なんだかしみじみとしてしまった。

「また、大きくなったんじゃないか?」

問いかけると腕の力がもっと強くなった気がする。掌で背中を二、三度叩く。緩んだ腕がもう一度抱きしめなおしてきた。絶対に離すまいとでも思っているらしい。声を出さないように苦笑するしかない。

「なあ、立向居」
「……はい」
「これじゃお前の顔が見えない」
「…もう少しだけ、もう少しだけこうさせてください」

子供のワガママのようなその願いには切実な響きが潜んでいて、受け入れるしかない。肩にかかる重みのなんと温かいことか。俺は静かに立向居の気が済むのを待っていた。不意に空気が動く。

「……ずっと待ってたんです」
「ああ」

立向居の声がすぐ傍で聞こえる。こんなに近くで聞いたのはいつ以来だろうか。背中が大きくなっていた。声も低くなったような気がする。二年は、そんなにも長い時間だっただろうか。

「あの日、あなたの姿がどこにも見えなくなったときから、何も言わずにいなくなってしまったときから」
「ああ」
「あの姿を見たとき、本当にびっくりしたんです」
「ああ」
「あなたの心が分からなくて戸惑った」
「……ああ」

立向居が顔を上げた。泣いてはいなかったが、泣きそうだ。腕の檻がほどけて二人の間に空間が生まれる。少し、寒い。

「お帰りなさい」
「……ただいま」

立向居がまた抱きしめてくる。きついぐらいの力が、なんだか嬉しかった。



―――
イシドじゃなくなった豪炎寺さんが戻ってきた話。

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